方向性まちまち=業績上振れ期待も米景気後退懸念-1~3月・時事株価フォーキャスト
2025年12月26日 14時00分

時事通信社は2026年1~3月の日経平均株価の見通しについて市場関係者に調査し、18人から回答を得た。日本企業の業績上振れや、高市早苗政権の政策期待などが上値を追う手掛かりとして挙げられた。一方、米国の景気後退や、地政学リスクの高まりを懸念する声もあり、1~3月相場の方向性はまちまちの予測となった。
上値予想の中央値は5万3000円で、最高値更新の予測が目立った。「米(トランプ)関税の影響一巡で来年度の企業業績期待が高まる」(山本信一・岡三証券投資戦略部シニアストラテジスト)ことなどが上昇に寄与するとみる。「政府の設備投資支援策が日本企業の競争力強化に貢献するだろう」(北原奈緒美・内藤証券投資調査部シニア・アナリスト)との声もあった。
下値予想の中央値は、4万7000円。株価下落の要因としては、「米景気の急失速や、インフレ再加速で利下げ期待が後退」(石原宏美・アムンディ・ジャパン株式運用部長)することへの懸念や、「米中対立の激化による世界貿易や日本経済への悪影響」(沢田麻希・野村証券ストラテジスト)、「AIデータセンターを巡る警戒再燃」(窪田朋一郎・松井証券シニアマーケットアナリスト)などが挙げられた。ただ、「日本株を買い遅れた国内機関投資家は多く、株価が下がれば着実に買いが入る」(伊井哲朗・コモンズ投信社長)との見方も出ている。
調査は12月下旬に実施した。(了)
【時事株価フォーキャスト(2026年1~3月)回答一覧】
★レンジ下限が低い順番で並べています。
◆名前・肩書き
①■万■~■万■円(方向感)
②上値の条件
③下値の条件
◆市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト
①4万3700~5万7300円
②ⅰ)米国で生成AI需要がさらに拡大し、データセンターなどへの大型投資に対する懸念も広がらず、ハイテク株を中心とする株高傾向が続くこと、ⅱ)米国で物価の伸びが緩やかに鈍化し、予防的利下げの累積効果によって雇用の下振れが回避され、景気の持ち直し期待が一段と強まること、ⅲ)高市首相が政権を安定的に運営し、責任ある積極財政のもと、長期金利急騰が回避されること、ⅳ)日本企業による投資家の視点を踏まえた質の高い資本効率改善などの取り組みと開示が想定以上のペースで増え、海外投資家の高評価につながること、ⅴ)中東情勢やウクライナ情勢が一気に好転すること、これら5つが同時に実現すること。
③ⅰ)米国で生成AI需要とデータセンターなどへの大型投資に対する懸念が広がり、ハイテク株を中心とした株価の大幅調整が発生すること、ⅱ)米国で物価の高止まりと雇用の下振れが鮮明となり、景気の先行き不安が一段と強まること、ⅲ)高市政権の失策で連立政権が揺らぎ、責任ある積極財政も市場の信認が得られず、長期金利が急騰すること、ⅳ)日本企業による投資家の視点を踏まえた質の高い資本効率改善などの取り組みと開示が停滞し、海外投資家の間に失望が広がること、ⅴ)中東情勢、ウクライナ情勢が大きく悪化すること、これら5つが同時に実現すること。
◆平川昇二・東海東京インテリジェンス・ラボ チーフグローバルストラテジスト
①4万5000~5万3000円(調整局面)
②25年12月中旬から流動性拡大や利上げ実施による悪材料出尽くしなどを背景に高値更新まで上昇し、1月もその水準を維持する。
③年初から最高裁のトランプ関税に関する判決やインフレ上昇などを背景に米長期金利が上昇。また、流動性も一時的に停滞し業績好転ながらもバリュエーション中心に日米株が調整局面入り。
◆石原宏美・ アムンディ・ジャパン 株式運用部長
①4万5000~5万3000円 (短期的に調整の可能性はあるが、四半期決算を通過して期末にかけて上昇基調)
② 米国景気が底堅く、インフレが急加速しないことで利下げ期待が維持され、リスクオン相場が続く。ⅱ)日本企業の業績が堅調に推移。ⅲ)高市政権への支持・政策期待が安定していること。
③ⅰ)米景気の急失速やインフレ再加速で利下げ期待が後退。 ⅱ)政権運営の停滞で政策期待が剥落。 ⅲ)日中対立など地政学リスクの高まり、及びAI関連投資への期待後退。
◆山本信一 ・岡三証券 投資戦略部シニアストラテジスト
①4万6000~5万3000円(もみ合い)
②ⅰ) AI投資への先行き不透明感が後退。ⅱ)労使交渉(春闘)での賃上げが進み、賃金と物価の好循環への期待からインフレ下での株高。ⅲ)米関税の影響一巡で来年度の企業業績期待が高まる。
③ⅰ)AI投資への先行き不透明感が強まる。ⅱ)米インフレ再燃や労働環境の悪化。ⅲ)地政学リスクなど。
◆大塚竜太・東洋証券 ストラテジスト
①4万6000~5万4000円。(高値更新もあり得る)
②日本固有の要因。人手不足を背景に賃上げが進むととともに、設備投資も増える。政策面でも、設備投資減税など、経済対策への期待感が広がりそうだ。
③日中関係の悪化。中間選挙を意識した米トランプ政権が内向きの姿勢を強め、同盟国に新たな負担が生じるなど、米国の政策をめぐる不透明感が出ること。
◆森田潤・ちばぎんアセットマネジメント 調査部長
①4万6000~5万3000円(強含みもみ合い、上限と下限は②③が起こる場合のリスクシナリオ)
②業績期待感から東証株価指数(TOPIX)が上昇する中で、AI・半導体関連株にも見直し買いが入る場合(再度NT倍率が拡大する場合)
③AI関連への警戒感が続く上に、2%を明確に上回る長期金利上昇と円安が同時に起こる場合(財政懸念などを目的とした日本売り的な動き)
◆藤代宏一・第一生命経済研究所 主席エコノミスト
①4万7000~5万1000円。(高値更新はしない)
②米国の景気後退が意識されるような市場を根幹から変えるほどの要因は出てこないだろう。
③10~12月に人工知能(AI)関連を中心に盛り上がった反動が出やすい。米連邦準備制度理事会(FRB)は1月に利下げしない。
◆井出真吾・ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト
①4万7000~5万2000円
②ユーフォリア的な上昇。インフレも株価を押し上げる要因になる。新年度の業績見通しが少し引き上がれば、その分、株も少し上振れ余地が生じる。円安も日本株にはプラスだ。
③米国のクレジット(信用)問題。米国で、労働市場の悪化、消費の鈍化などにより景気後退懸念が広がること。インフレの再燃も米国の利下げを遠のかせる。来年は、人工知能(AI)関連も勝ち組・負け組が選別されるステージに移り、今年ほどのけん引力はないだろう。足元、金利も株価に影響しやすくなっている。来年は日本株全体で選別が進みやすくなる。
◆ 服部誠・丸三証券 エクイティ本部長
①4万7000~5万4500円(5万円を挟んだもみ合いから上放れ)
②生成AI関連物色の裾野拡大(フィジカルAI関連)、日本固有の材料(ガバナンス改革、サナエノミクス、第3Q決算での通期見通し上振れ、政局の安定化)などを背景に、23年、24年と同様に年初から海外投資家の日本株買いが顕在化すること。
③米国でのAI関連銘柄のさらなる値幅調整、利下げ機運の後退、プライベートクレジットリスクの顕在化などにより、米国株式が値幅調整をすること。国内金利の過度な上昇、日中対立のエスカレートなど。
◆伊井哲朗・コモンズ投信 社長
①4万7500~5万2500円(年度末にやや軟化か)
②年初は少額投資非課税制度(NISA)を通じた個人資金流入による需給の引き締まりが予想される。2026年は1年を通じて1ドル=140円台後半なら1桁台後半の経常増益が予想され、活発な自社株買いとともに1株利益を押し上げ、株価上昇の原動力になるとみている。日経平均は年内に5万7000円程度まで上昇すると予想する。
③過熱感の強い人工知能(AI)関連銘柄がいったん調整局面を迎え、少数の人工知能(AI)・半導体関連株の構成比が大きい日経平均は下落する可能性がある。
ただ、日本株を買い遅れた国内機関投資家は多く、株価が下がれば着実に買いが入ってくるとみられ、下落余地は限られるのではないか。
◆浪岡宏・T&Dアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネージャー
①4万7800~5万2500円 (もみあい)
米国株は金融相場から業績相場にスムーズに移行できずに中間反落の局面にあると思われる。こうした状況が日本株にも影響を及ぼしており、日本株は日柄調整のタイミングに入っていると思量
②ⅰ)ハイパースケーラーのAI関連投資について以前のように前向きに評価できるようなセンチメントが醸成されること。
ⅱ)米国株について金融相場から業績相場に移行して、政策金利引き下げの思惑よりも業績に関心が向くこと。
③ⅰ)決算で先行きの収益性について懸念が高まり、投資家がハイパースケーラーのAI関連投資についてこれまで以上に懐疑的にみる状況に至ること。
ⅱ)米国株において金融相場的な状況が続くなかで、経済指標が下振れているにも関わらず利下げに消極的な姿勢がFRB高官から示されたり、インフレの再加速が意識されたりすること。
ⅲ)十二支の相場格言が意識されるなかで、36年前の午年(バブル崩壊本格化)の記憶が市場参加者の投資行動に影響を及ぼすこと。
◆ 安田光・SMBC日興証券 チーフ株式ストラテジスト
①4万8000~5万6000円(上昇)
②高市政権の政策への期待や円安を支えとした業績の上振れ期待を基に上昇基調が継続する場合
③米国の利下げ観測後退が金利上昇を誘発する場合
◆北原奈緒美・内藤証券 投資調査部シニア・アナリスト
①4万8000~5万2000円(いったん軟化も年度末自律反発)
②1月末から本格化する2025年10-12月期決算発表では、企業業績がさほど悪くないことが確認され、見直し買いを誘うだろう。為替が円安ドル高に向かっていることも想定為替レートの修正を通じて業績予想を押し上げ、株価の上昇要因となりそうだ。年度末には配当金の再投資も期待できる。
年間を通じては、日経平均は5万4000円程度までの上昇を予想している。政府の設備投資支援策が日本企業の競争力強化に貢献するだろう。
③米国で人工知能(AI)・半導体関連企業の資金確保についての懐疑的な見方が払拭できていない。米ハイテク企業の株価が下落すれば、日本株も連れ安する場面がありそうだ。
◆窪田真之・楽天証券 チーフ・ストラテジスト
①4万8000~5万2000円。(横ばい)
②ⅰ)米中貿易戦争の休戦状態が、続く。トランプ大統領は2026年11月の中間選挙を意識するため、26年は株の下落につながる関税強硬策は出せない。中国も景気悪化で国民の不満が高まる中で、米国との対立を先鋭化できない。
ⅱ)高市政権の高支持率が続く。高市政権による成長戦略が本格的に始動する。
ⅲ)米国景気はソフトランディング、日本の景気・企業業績ともに、1-3月は堅調。
③ⅰ) 米中対立が再び、高まる。日中関係の悪化も続く。
ⅱ)高市政権の支持率が低下して、成長戦略を思うように実行できなくなる。
ⅲ)米景気が失速、米利下げは続くものの、米景気・企業業績への不安が高まる。中国景気の悪化も続く。
◆藤原直樹・しんきんアセットマネジメント投信 シニアファンドマネージャー
①4万8000~5万2000円 「↗」「→」「↘」(上昇し、もみ合いののち、後半にかけて下落傾向)
②春闘での賃上げ率が想定を上回る
③円安が加速し日銀の追加利上げ観測が強まる
◆窪田朋一郎・松井証券 シニアマーケットアナリスト
①4万9000~5万5000円(上昇基調維持)
②次期FRB議長の利下げに対する前向きな発言
③AIデータセンターを巡る警戒再燃
◆ 坪井裕豪・ 大和証券 チーフストラテジスト
①5万0000~5万5000円(3月末にかけ上昇加速、3年連続の過去最高値更新へ )
②世界景気の軟着陸期待が持続することが引き続き条件。米国で政府閉鎖明け後の経済統計が過度に悪化していないことが望ましい。国内では、新年度予算審議が進む中で、過度な金利上昇が回避されることが条件。加えて、10―12月期決算発表でAI・半導体関連企業の業績や見通しが堅調に推移することも必要。
③現値を下値目途と考えるが、下限値を下回っていく条件は以下となる。米関税訴訟に違法判決が下された後にトランプ政権が新たな関税ロジックを打ち出すこと、FRBの独立性について疑義が強まること、国内長期金利の上昇に歯止めが掛からなくなること、AI・半導体・データセンター周りで既存の投資計画の下方修正がおきること、などと考えられる。
◆沢田麻希・野村証券 ストラテジスト
①↗ (上昇傾向)
②ⅰ) 2026年度業績拡大の確度の向上
日本企業の業績モメンタムは、米国の関税政策の影響を重点的に織り込んだ25年6月を底に、夏場頃より上方修正軌道に復帰し、その流れが現在も続いている。25年度増益を 達成すれば、21年度以降5期連続で最高益更新となる。トランプ関税や円高の影響一巡とともに、26年度増益への確度が高まっていると考えられる。
ⅱ)高市政権の経済政策への期待の高まり
高市政権は強い経済を実現するため、責任ある積極財政を推進している。重点17分野を定めて投資や成長を支援し、総合経済対策では大規模な予算を手当てした。その効果は26年年初からあらわれてくるだろう。戦略分野に政府が財源を投じることが名目GDPの拡大や企業のEPS増加につながりやすいと考えられる。
③ ⅰ)新政権の政策による財政の健全性への信認低下。金利上昇圧力となり、株価の重石となる可能性がある。
ⅱ)米中対立の激化が世界貿易や日本経済に悪影響を与える。日中関係悪化による影響が広がるリスク。



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