顧客の信頼積み重ね事業拡大狙う=今期は増収増益見込む―中原証券社長インタビュー
2025年11月06日 13時20分
インタビューに答える中原証券の中原正博社長=10月17日、東京都中央区 中原証券の中原正博社長はこのほど、時事通信とのインタビューに応じ、顧客の信頼を積み重ねて会社の成長を図る考えを強調した。業績は前期には振るわなかったものの、「(今期は)通期で増収増益を見込んでいる」と語り、好調な株式市場を背景に黒字を確保する意気込みを語った。同社は1934年創業で、昨年90周年を迎えた老舗の地場証券。
中原氏は今年6月に6代目の社長に就いた後、関東に展開する6拠点をすべて訪問した。各拠点で「信頼とまごころが人を結ぶヒューマンビーイング(人間性尊重)」を重視する経営理念を改めて説明し、顧客の信頼を第一にビジネスを進めるよう呼び掛けた。インタビューの主なやりとりは次の通り。
―創業から90年を超えた老舗の地場証券として、着実に事業を拡大した秘訣(ひけつ)は。
中原証券は、「証券業の社会的役割を自覚し、人間性尊重を信条としてお客様から信頼される堅実・優良な企業を目指す」ことを経営理念に掲げている。信頼とまごころが人を結ぶ、ヒューマンビーイングを大切にしている。自主独立経営に基づいて堅実経営を行い、こうした経営理念を守って、日々努力してきた。対面営業の証券会社として、顧客ニーズに合わせてきめ細やかに対応し、顧客に常に誠実であることを心掛けてきた。
規模の拡大に固執することなく、地元の顧客に密着し、信頼関係を築いてきた。顧客との信頼を第一に考えて信頼を勝ち取り、長くお付き合いし、(事業を)続けてきた。秘訣(ひけつ)というほどではなく、地道なことをしっかり進めてきた。かなり長く取引してきた顧客が存在し、2代、3代にわたる取引先もいる。
―現在のビジネス展開における中原証券の強みと課題は。
以前から、国内株式を中心に対面式の営業活動を行ってきた。今後も中原証券は従来通り、国内株式に一番力を入れて、株式の個別銘柄の研究を重ね、顧客のさまざまなニーズに合わせたコンサルティングをやっていきたい。株式一つとっても、金利が低い中で株式の高い配当を受け取ることで手堅く投資する顧客もいれば、株主優待の銘柄を好んで買う投資家もいる。頻繁に売買を繰り返したり、長きにわたって株式を持ったりする投資家もおり、それぞれのニーズに合った提案を引き続き行っていく。
他方、時代の流れで「国際分散投資」「貯蓄から投資」「資産運用の必要性」がこのところ話題になっている。こうした状況を踏まえ、数年前から国内株式以外の商品も取りそろえてきた。顧客のニーズに応えるため投資信託、外国債券、米国株式を取り扱っている。対話を通じて、日々変化する相場、個別銘柄を顧客にアドバイスすることを一番重視している。
課題としては、高齢化社会で今後、取引する顧客が減少することも考えられる。高齢の顧客から信頼を得て、次世代につながる取引にしていかなければならない。既存の顧客の親族と信頼関係を築き、取引関係を引き継いでいけるようにやっていきたい。贈与、相続は非常に面倒な手続きが多いが、きめ細やかに対応して、信頼関係を次世代の顧客に引き継げるようにする。こうした新たな顧客への営業展開を今後も図っていく。インターネット取引というよりは、対面営業でコンサルティングをしっかりやっていきたい。インターネットにはセキュリティーの問題も生じており、身近に相談できる営業マンが重要になる。
―「貯蓄から投資」への流れ、現在の株高などをどう評価し、どう事業に生かすか?
「貯蓄から投資」は長い間言われてきたが、それでも日本の家計の現預金比率は依然高い。株式、投信への投資の割合は低いままだ。先の税制改正によって、家計の資産を貯蓄から投資にシフトさせるためにNISA制度が変わってきた。中原証券は、対面式の証券会社として特に日本株の研究に力を入れ、顧客にコンサルティングしていく。現在の株高を背景に従来の顧客に加え、株式に興味を持つ人を増やしていきたい。株式の魅力、いろいろな投資スタイルを説明していく。それに付け加えて、国際分散投資という流れがあり、取り扱う商品数はまだ多くないが、投資信託、外国債券、米国株などの品ぞろえを図り顧客を増やしていきたい。
―2025年3月期は営業収益が前期比マイナスで、当期純損益は赤字にとどまった。26年3月期業績をどう見込む。
前期は、日米の金利動向、金利見通しによって株式市場がボックス相場になった。そういう市場環境もあり、営業収益がマイナスになった。26年3月期見通しは、日経平均株価が高値を更新してきている。相場の状況からして、前期よりは業績が良くなる。通期で増収増益を確保できると見込んでいる。
―34年に創業100年を迎える。拠点網、商品の拡充などの戦略をどう考える。
地域密着、自主独立で堅実経営を行い、規模の拡大を追求することなく、ずっとやってきた。店舗数の拡充を考えていないわけではないが、とにかく顧客を大切にし、働く従業員が無理なく安心して働ける環境を維持していく。背伸びして稼ごうとするのではなく、堅実に経営を続けていきたい。顧客ニーズに合ったきめ細やかな対応をする意味でも、無理はできない。商品の品ぞろえ(拡充を)検討していくが、メインの国内株のコンサルティングができなくなってはいけない。(取り扱う米国株の品そろえは)ニーズがあれば、増やしていきたい。ただ、一度に増やしても、事務コスト、手間がかかる。営業現場で顧客のニーズがあれば、少しずつ増やしていく。
―社長就任後、すべての拠点を訪れ、自らの言葉で社員と対話したと聞く。新社長の抱負は。
中原証券の中原正博社長=10月17日、東京都中央区 各拠点では、経営理念を守り続けることにより、今後もさらに発展できると訴えた。対面営業の証券会社として、顧客のニーズに合ったきめ細やかな対応を誠実に行い、コンプライアンスを徹底すること、信頼されることをきちんとやっていかなくてはいけない。社員一同が自ら自己研さんを行ってレベルアップを図っていくことなどを伝えた。
証券業の社会的役割を自覚し、人間性尊重を信条として、顧客から信頼される堅実、優良な企業を目指すという経営方針を話した。また、「貯蓄から投資」に向けてどうあるべきか。対面営業の証券会社としての存在意義を高める方針を話した。どの証券会社にも負けないくらい株式の相場、個別銘柄の研究に力を入れ、顧客のニーズに合ったコンサルティングをしっかりやっていこうと呼びかけた。
時代の流れで、高齢化社会になっており、相続・贈与の手続きが増えていく中で、相続・贈与に関する知識の習得をしっかりやっていく。年配の顧客、そうした顧客の親族と関係を築く。相続・贈与の手続きの際には、きめ細やかにやり方をアドバイスし、フォローしながら、説明して信頼を得ることを進めようと話した。何より大事なのは、今まで取引してきた顧客との信頼関係を保ち、取引を続けてもらえるようにしっかりやっていくことだ。経営理念を守って信頼を得て、ニーズに応えながら新たな顧客を増やしていこうと訴えた。(了)



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