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1~3月期は上向き基調=トランプ氏の政策、注目度高い―時事・株価フォーキャスト

2024年12月27日 14時00分

日経平均25年1月-3月予想レンジ

 時事通信社は2025年1~3月の日経平均株価の予想を市場関係者に尋ね、20人から回答を得た。トランプ次期米大統領の政策が実行されることで不透明感が後退して株高につながるとの回答が複数あった一方、トランプ氏の高関税政策などが株安を招くとの指摘もあり、大統領就任後のトランプ氏の政策の注目度は高い。3カ月を通しての株価の基調は上向きとみる人が多かった。

 株価上昇の条件として目立つのは、「トランプ氏の掲げる関税引き上げが警戒されていたほどにならない」(藤代宏一・第一生命経済研究所主席エコノミスト)など、世界経済に対するトランプ政権の政策による悪影響が想定よりも小さくなることだ。「トランプ関税」については、通商交渉を有利に進める手段にすぎないといった声も聞かれ、市場では、具体的な政策が決まれば「あく抜け感」が出るとの期待感がある。

 「企業業績の上振れ」(井出真吾・ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト)など、収益動向は引き続き株価の材料で重視されている。「賃上げや内需刺激策への期待」(山田雪乃・大和証券投資情報部長)、「企業価値向上に向けた取り組み」(沢田麻希・野村証券ストラテジスト)なども挙げられ、賃金と物価の好循環、資本効率改善の取り組みへの期待が引き続きうかがえる。

 トランプ新政権の政策を巡っては「高関税を実行に移すなど、市場の懸念が現実になると、先行きの世界経済に不透明感が出る」(大塚竜太・東洋証券ストラテジスト)とされ、株高だけでなく株安の要因にもなり得ると警戒する向きは少なくない。「高値圏にある米国株のモメンタム低下」(大西耕平・三菱UFJモルガン・スタンレー証券上席投資戦略研究員)、「通常国会での予算審議の混乱」(宮嵜浩・伊藤忠総研マクロ経済センター長)を心配する声も聞かれる。

 同時に尋ねた25年の高値は、24年7月に付けた過去最高値(4万2224円、11日)を上回るとの予想が大勢となっている。調査は12月中下旬に実施した。(了)


【時事株価フォーキャスト(2025年1~3月)回答一覧】

◆名前・肩書き
①日経平均株価の予想レンジ、方向感
②レンジの上値実現条件
③レンジの下値 〃
④2025年の最高値


◆市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメントチーフマーケットストラテジスト

①3万3700~4万4700円。上昇。2025年3月末着地は4万0500円。

②(1)トランプ次期米政権が前回よりも慎重な関税引き上げの判断を行い、市場の懸念が大きく後退すること(2)年収103万円の壁が178万円へ引き上げられること(3)2025年春闘で平均賃上げ率が2024年の5.1%を大幅に上回ること(4)投資家の視点を踏まえた質の高い資本効率改善などの取り組みと開示が想定以上のペースで増えること(5)中東情勢、ウクライナ情勢が一気に好転すること―これら五つが同時に実現すること。

③(1)トランプ次期米政権の積極的な関税引き上げによって各国が報復関税に動き、世界的に景気が冷え込むこと(2)参院選で与党が敗北し、ねじれ国会になること(3)2025年春闘で平均賃上げ率が2024年の5.1%を大幅に下回り、賃上げ機運が低下すること(4)投資家の視点を踏まえた質の高い資本効率改善などの取り組みと開示が停滞すること(5)中東情勢、ウクライナ情勢が大きく悪化すること―これら五つが同時に実現すること。

④4万5400円(2025年12月末着地水準)。


◆沢田麻希・野村証券ストラテジスト

①3万7750円~4万3750円

②米トランプ新政権の関税政策に加えて、FRBの利下げ休止や日銀による追加利上げに伴う円高進展など、日米の金融政策に対する懸念も重石となりそうだ。一方、日本企業の業績拡大や企業価値向上に向けた取り組みへの期待が 日本株の下支えとなるとみている。24年度の日本企業の総還元性向は60%に達するとみられる。また、24年11月時点での上場企業の自社株買い設定額は13.7兆円となり、24年度自社株買いは既に過去最高を記録している。

③25年1月に就任するトランプ米大統領は、政策の発動について、大統領令で即時指示可能な関税や移民などの政策から着手するとみられ、就任早々に米国の保護主義的な政策に対する懸念が一段と高まる可能性がある。

④25年末は、4万2000円を予想する。日本企業の業績は25年度にかけて値上げ効果に加えて、数量効果が円高に伴う収益押し下げ効果を相殺する形で増益が達成可能と野村証券では予想している。24年は日本の鉱工業生産が自然災害や自動車の不正問題で低迷したが、25年は正常化するだけで高い伸び率となると試算される。また、日本企業のガバナンス改革と高水準の自社株買いが継続することが見込まれる。日本株市場は、企業業績の拡大と資本効率の向上の好循環が続けば、24年 7月11日に付けた4万2224円の史上最高値更新も視野 に入ってくるとみられる。


◆山田雪乃・大和証券投資情報部長

①3万9000円~4万3000円。緩やかに上昇。
トランプ政策との綱引き局面がありつつも、次第に好材料が上回っていく展開を想定。
新年入りで、新NISA(少額投資非課税制度)資金が新たに流入しよう。

②割安感の修正と、賃上げや内需刺激策への期待が株価上昇のけん引役へ。資本コスト経営や政策保有株縮減の進展期待から海外投資家による日本株投資が旺盛になる場合。

③ 市場が期待する減税や規制緩和などのトランプ政策の進展期待が後退した場合。トランプ次期政権下で、関税引き上げや日米間の貿易協議への警戒感が広がる場合。

④4万5000円


◆三宅一弘・レオス・キャピタルワークス経済調査室長

①3万7000~4万3000円。乱高下交えながらも上昇相場、最高値更新。

②〔業績堅調を確認〕国内景況感の改善。円安基調の下で外需企業の業績も堅調。
〔リスク選好〕トランプ政権の減税や規制緩和を好感する形で米国株上昇

③トランプ政権の関税強化や対中強硬策を嫌気。石破内閣に対する支持率低下、国内政局。

④4万3000円。


◆河合達憲・auカブコム証券チーフストラテジスト

①3万9500円(1月)~4万2500(3月)。上昇。

②1~3月の期間は企業の第3四半期決算発表がある。このタイミングでは業績の上方修正が多く出てくるとみている。上方修正が相次ぎ、好業績の追い風が吹けば株価を押し上げるだろう。

③ 12月から1月にかけては材料に乏しく、いまの水準が維持されそうだ。積極的に上にいくのは難しい。

④4万5000円。


◆秋野充成・いちよしアセットマネジメント社長

①3万9000~4万2500円。↑

②米国景況感の拡大。日銀の利上げ無し。

③日銀の早期利上げ。

④4万6000円。


◆安田光・SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト

①3万6000~4万2500円。もみ合い。

②トランプ次期米政権始動後、早々に関税政策リスクが後退する場合。

③トランプ次期米大統領の貿易政策や関税強化といった政策リスクをマーケットが嫌気する場合。

④4万8500円。


◆服部誠・丸三証券エクイティ本部長

①3万8000~4万2000円。1月中旬までは年内買われた銘柄が利益確定売りに押される場面があると思うが、その後は10月以降続いている持ち合い相場を上放れる。

②調整を挟みながらも米株高が持続しつつ、日銀の追加利上げを織り込み過度な円高にならないこと。相対的な割安感や企業の変革に期待した海外投資家の日本株買いが再燃すること。来年1月下旬以降に発表される24年10~12月期の決算で日経平均のEPSが2550円程度まで切り上がること。

③インフレ圧力により米長期金利が5%を超える水準まで上昇すること。トランプ次期大統領の対中政策、対中南米政策が混乱を引き起こすこと。急激な円高進行。地政学リスクの高まり。

④4万5000円。


◆宮嵜浩・伊藤忠総研マクロ経済センター長

①3万8000~4万2000円。上昇。

②トランプ関税の不透明感の払拭。

③通常国会での予算審議の混乱。

④4万2000円。


◆石原宏美アムンディ・ジャパン株式運用部長

①3万6000円~4万2000円。年始はもみ合いも、期末にかけて上昇トレンド。

②トランプ大統領就任後、関税・移民政策などに対する政策の方向性に対する不透明感の後退。米国経済のソフトランディングおよび利下げサイクル見通しに対して、堅調な進捗が確認できる。日本企業通期決算の会社予想に対する上方修正期待の高まり

③トランプ大統領就任後、まもなく大幅な関税政策が導入される。米国景気が急減速し、FRB(米連邦準備制度理事会 )による大幅な利下げ、これにより円高加速による外需企業の業績見通しの悪化。

④ 4万4000円。堅調なEPS(1株当たり利益)成長に加え、日本企業のROE(自己資本利益率)平均が10%を超えることによるPER(株価収益率)切り上がりが実現した場合。


◆大塚竜太・東洋証券ストラテジスト

①3万6000~4万2000円。上下する荒い展開。

②トランプ米次期大統領の政策が警戒されていたほど世界経済にマイナスにならないと確認されれば、安心感につながる。

③トランプ氏が高関税を実行に移すなど、市場の懸念が現実になると、先行きの世界経済に不透明感が出る。

④4万4000円。年末にかけて高値を付けると見込む。


◆藤代宏一・第一生命経済研究所主席エコノミスト

①3万8000~4万1500円。上昇。

②トランプ大統領の掲げる関税引き上げが警戒されていたほどにならないとの見込みが生じる。

③FRBの利下げが1回に留まるなど利下げ観測の剥落。インフレ率再加速を示すデータに注意が必要。

④4万4000円。自社株買い、インフレが追い風に。


◆大西耕平・三菱UFJモルガン・スタンレー証券上席投資戦略研究員

①3万7500~4万1500円。緩やかに上昇。

② 来期業績への期待感の高まり(10~12月期決算の好調とコンセンサスEPSの切り上がり)。1月20日のトランプ氏就任後の政策方向性のクリア化(関税のレベルはどれくらいかなど)。インフレ率低下でFRBの再ハト派化期待の高まり。

③ 高値圏にある米国株のモメンタム低下(理由付けは何でもあり。バリュエーションの高さから利益確定の売りが出る可能性)。現状では取引材料とみられているトランプ氏の関税政策実行とリスク顕在化。インフレ再燃。

④4万5000円。


◆山本信一・岡三証券シニアストラテジスト

①3万7500~4万1500円。上昇。

②トランプ政権が減税や規制緩和などの市場フレンドリーな政策を優先。

③トランプ政権の関税政策に関する発言に市場が過剰反応。

④4万3500円。


◆西原里江・JPモルガン証券チーフ株式ストラテジスト

①3万8000~4万1000円。主にレンジ相場の展開であり、やや下方リスクが大きい。

②トランプ2.0政権の発足により、マクロ影響(金利上昇、円安、米国の需要拡大など)は日本市場に望ましい影響をもたらす。

③ミクロ政策面(追加関税、半導体規制等)を巡る不透明性が株価を抑える要因となる。2018年~19年のように、米中貿易合戦が激化する場合は日本株売りに波及する可能性が高い。

④年末目標株価、4万3000円と予想。


◆黒瀬浩一・りそなアセットマネジメント・チーフストラテジスト

①3万8000~4万1000円。上昇。

②米トランプ政権が混乱せずスムーズに発足する。補正予算の効果で景気が持ち上がる。期末を控え企業が株価対策を続々と発表する。

③米国トランプ政権が発足して無理難題を要求され世界が困惑、市場も混乱する。

④4万4000円。


◆北原奈緒美・内藤証券投資調査部シニア・アナリスト

①3万8000~4万1000円(1月に高値)

②新年入りとともに、NISA(少額投資非課税制度)の新しい投資枠ができることから、個人マネーの流入が予想される。

③日銀による1月の追加利上げを市場は半分程度織り込んでいるようだ。日経平均を総選挙後の安値(10月24日の3万7712円)割れまで押し下げるほどの不透明材料は見出しにくい。

④4万3000円(5月に高値)
デフレ脱却が本格化するとともに、6月の株主総会集中期を前に利益還元強化や経営効率改善を求める株主提案の活発化も予想される。3月期決算発表で、2025年3期業績の底堅さを確認し、26年3月期も稼ぐ力の増大方向が見えてくれば、株価は上昇するだろう。


◆井出真吾・ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト

①3万7000~4万1000円。上下繰り返すが、下値は徐々に切り上がる。

②企業業績が上振れすること。会社の見通しは依然慎重で、自然体でも上振れしやすい。

③トランプ次期米政権の政策や日米の金融施策が嫌われる、米国株が調整するなど。ゴルディロックス状態が崩れて3万7000円程度まで下がる可能性はある。

④4万3000円。「トランプ関税」は交渉の手段だと認識され、年後半は上昇基調になる。


◆藤原直樹・しんきんアセットマネジメント投信・シニアファンドマネージャー

①3万8000~4万0500円。年明けから上昇に転じるも、期末にかけて軟調に。

②年初からNISA口座からの買いが相場を押し上げる。1月も日銀は利上げを見送り円安基調が継続する。米国は1月の利下げを見送り、就任式に向けてトランプ政権への政策期待が高まる。

③3月のFOMCで利下げが検討される一方、日銀が利上げに動き為替が円高基調に転換。期末に向けた機関投資家の益出しや企業の政策株の売却が重しとなる。

④4万6500円。


◆伊井哲朗コモンズ投信社長

①3万7000~4万0000円。2月に一時軟化。

②トランプ大統領就任でいったん好材料が出尽くした形になる。

③米国株は割高な状態にあり、S&P500指数は10%程度の調整を迎え、日本株も連れ安する場面がありそうだ。

④4万4500円。年末高。為替が1ドル=145円を超える円安で推移すれば、日本企業は10%以上の増益が可能だ。1株当たり利益の増加にPER(株価収益率)の割安修正を加味すれば、日経平均は4万円台半ばへ上昇するだろう。

(了)

 

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