〔海外速報ニュース〕中国経済「デフレスパイラル」の懸念=WSJ報道
2024年12月20日 11時26分
【上海時事】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は19日までに、中国経済が内外需双方の力強さを欠いており、物価が下落し、企業収益が悪化する「デフレスパイラル」に陥りかねない状況に直面し、低迷が長期化する恐れがあると報じた。
◇値下げで経営圧迫
中国の製紙大手の晨鳴紙業集団(山東省寿光市)は紙製品市場における需要低迷や競争激化を受け、在庫処分で値下げを余儀なくされる。値下げで収益が圧迫され、経営不振が続く。先月公表した支払期限が過ぎている未払い債務は18億2000万元(約390億円)に上った。債権者が訴訟を起こし、同社の銀行口座の一部は凍結されたという。
中国経済が低調を続ける中、製造業者は過剰生産能力と需要低迷への対処に苦慮している。晨鳴紙業の問題は価格の持続的低下が中国経済に待ち受ける混乱の兆候と言える。
◇PPI下落続く
中国の11月の生産者物価指数(PPI)は前年同期比2.5%下落。2年2カ月連続の前年割れとなり、回復の兆しはほとんど見られない。名目GDP(国内総生産)を実質GDPで割った中国のGDPデフレーター(経済全体の物価水準を示す広義の指標)は6四半期連続でマイナス圏。これは1990年代後半以来の長さとなっている。
中国の11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.2%上昇にとどまり、多くの中央銀行が経済にとって健全な水準とみなす2%を大きく下回る。
◇供給過剰に懸念
中国当局はここ数カ月、不動産市場の不況や各地方政府の債務拡大などの苦境に立たされる経済を下支えるために、さまざまな措置を講じている。金利引き下げのほか、先月には地方政府の財政を補強するために1兆4000億ドルの債務交換計画を承認した。
中国経済には回復の兆しがあるものの、これまでの措置が物価上昇を後押ししているようには見えない。当局は個人消費を持続的に拡大させることより、目先の金融リスクを回避することに主眼を置いているもようだ。さらに、中国当局は融資や補助金で製造業を支援。製造業によって成長を押し上げることに力を注いできたが、同時に供給過剰問題を悪化させ、価格下落に拍車をかけている。
晨鳴紙業集団では、経営陣が生産能力の約4分の3を停止させた。国家統計局のデータによれば、中国の1~10月の紙・段ボール生産量は前年同期比10%増加した一方、紙製品の価格は22年以降、前年比で下がり続けている。
◇トランプ関税で経営圧力も
トランプ次期政権が関税を引き上げる構えを見せているため、中国企業の過剰生産を米国市場で消化することも困難になり、国内市場も吸収できない。企業は次第に投資を先延ばししたり、人員を削減したりする可能性がある。また、消費者の間で物価がさらに下がると考えて買い控える動きも広がる。物価下落期待が定着してしまうと、覆すのは難しく、「悪循環に陥る」懸念が高まっている。
11月末時点の中国の30年物国債利回りは2006年以来初めて日本の30年物国債利回りを下回った。長期債利回りの低下は、投資家が中国経済を不安定なものと考え、株式などの投資より安全性が高いとされる債券を求めるようになっているためだ。
浙江省にある繊維メーカーの営業担当者は、米国の対中国製品の追加関税が導入されれば、経営への圧力がさらに強まる可能性があると述べた。同メーカーは同業者と競争するために値下げを余儀なくされ、利益を食いつぶし、人員削減につながっていると指摘。担当者は「これは始まりにすぎないかもしれない」と語った。(了)
トランプ関税
トランプ次期米大統領が公約した輸入品に対する高関税。11月下旬に麻薬や不法移民の流入が止まらないことへの対抗として、中国製品に10%の追加関 …