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〔証券情報〕広がるか企業の取引時間中開示=東証、11月5日から取引時間延長

2024年09月27日 12時58分

時事時事

 東証は11月5日から、取引システムの更改に合わせ、株の取引時間の終了時刻を現在の午後3時から3時半へと30分延長する。市場の利便性向上やシステム障害発生時の対応時間を確保するのが狙いで、終了時刻の延長は1954年以来、70年ぶりとなる。現在は決算などの適時開示を午後3時以降に行う企業が多く、開示時刻が単純に遅れれば、投資家への恩恵が限られるだけでなく、経済活動全体の効率も悪化しかねない。東証は午前の取引終了後の昼休みなども活用した開示を呼びかけているが、企業がどこまで応えるかは未知数だ。

 東証の取引時間は現在、午前9時から1時間の昼休みを挟んで午後3時までの5時間。ニューヨークの6.5時間やロンドンの8.5時間、シンガポールの7時間など海外取引所に比べても短く、取引機会拡充を求める声は投資家から根強く寄せられてきた。さらに2020年10月のシステム障害で取引の終日停止を強いられた後は、事故が起きた場合も同日中に取引を再開できる時間的な余地を広げることが望まれていた。

 東証は以前から企業に対し、市場の価格発見機能を適切に発揮するため、適時開示事項に関する経営判断を行った場合は「取引時間中か否かに関わらない、速やかな開示」を要請。今回の時間延長に際して開示が単純に遅れることが懸念されたため、今年9月に企業向けに「速やかな開示の検討」を求める文書を改めて送付した。

 しかし、企業は決算を含む適時開示の約8割を午後3時以降に行っているのが実情だ。取引時間中の資料開示により、「短期的な特別損失で純損益が赤字になる、といった特定の数字だけが独り歩きし、株価に過度な変動が起きることを避けたい思い」(ある東証プライム上場企業の経営者)が背景にあるとされる。

 11月上旬は例年、9月中間決算の集中シーズンに当たる。物流大手のヤマトホールディングスは11月5日午後3時半に決算の資料を開示し、午後4時から記者会見を開く予定だ。資料開示は前年の9月中間決算の午後3時より遅らせる。広報担当者は取材に対し、「決算を含む重要情報の公表は、社内手続きなどが終了したタイミングで速やかに開示できるよう努めている」と説明。今後は東証の前倒し開示要請も踏まえ、「社内手続きなどが終了したタイミングで速やかに開示できるよう努める」と述べた。

 6日に決算発表を予定する食品のキッコーマンも、午後3時半から資料開示と会見を予定している。

 一方、8日に決算を発表する家電量販のヤマダホールディングスは、午前の取引終了時刻に当たる11時半に資料開示と記者会見を行う。「投資家との対話を踏まえ、今期(25年3月期)から開示姿勢を転換させた」といい、8月9日にも同じ時間帯に4~6月期決算を発表した。広報担当者は「資料開示後すぐに会見を開いたことで、『経営者による説明も分かる』と投資家の反応はおおむね好評」と話す。

 ヤマダHDのような動きは今後、どこまで広がるか。東証は「あくまでお願いベースで前倒し開示要請を続ける」(株式部)姿勢だが、市場関係者は「記者会見や決算説明会を迅速に行うことで、決算資料上の特定の数字が独り歩きするといった事態は避けやすい」(銀行系運用会社ストラテジスト)との見方を示す。「前倒し開示をそつなくこなす企業が徐々に増えれば、日本企業特有の『横並び意識』から、取引時間中の開示が浸透する可能性もある」(同)とみる。東証には、こうした日本企業の特性に着目した呼びかけの工夫が必要かもしれない。(了)

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