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フィンテック企業ハッシュポート、ブロックチェーン技術の大衆化目指す=吉田CEO

2024年06月06日 07時29分

時事通信社のインタビューに応じたハッシュポート(英語表記 HashPort)代表取締役CEOの吉田世博氏時事通信社のインタビューに応じたハッシュポート(英語表記 HashPort)代表取締役CEOの吉田世博氏

 開幕まで1年を切った2025年大阪・関西万博は、会場内での買い物やサービスの決済に「デジタルウォレット」と呼ばれる最先端のテクノロジーが使われることでも注目されている。公式アプリ「EXPO2025デジタルウォレット」を開発した、フィンテック企業「ハッシュポート」(東京都)の吉田世博代表取締役CEOは、時事通信社の取材に応じ、「ブロックチェーン(分散型台帳)技術のマスアダプション(大衆化)を目指したい」と抱負を述べた。主なやりとりは以下の通り。

 ―ハッシュポートについて。

 海外大手コンサルティング会社の社員として中国で新規ビジネスの立ち上げに従事していた2016年ごろ、ブロックチェーン技術に出合い、興味を持った。18年にベンチャー支援を手掛ける「クオンタムリープ」の創設者で、元ソニー社長の故出井伸之氏から後押しを受け、起業を決めた。現在は、東京大学エッジキャピタルパートナーズが運営するファンドや三井住友フィナンシャルグループ<8316>などから出資を受けている。

 最初は暗号資産(仮想通貨)交換業者のサポートから始めた。その後、独自のブロックチェーン計画を立ち上げ、暗号資産の取引に不可欠な「ウォレット」の技術を持つベンチャー企業を買収した。そして、22年に大阪・関西万博の公式デジタルウォレットを開発してみないかと話をいただいた。

 ―デジタルウォレットはなぜ必要か。

 これからはネット上でさまざまなモノや価値が安全な形で取引され、情報の取り扱いについては、大手プラットフォーム企業任せではなく、個人が主体となる「web3」時代が到来するだろう。そこに不可欠なのが、ブロックチェーン技術を基盤とする暗号資産やNFT(非代替性トークン)の入れ物になるデジタルウォレットだ。

 大阪・関西万博はそうした新しいテクノロジーに触れることのなかった人々が、最初の一歩を踏み出すきっかけになると思っている。

 ―23年11月にリリースした万博デジタルウォレットの普及状況は。

 7万回以上のダウンロードがあった。大阪市内のみならず関西地域を中心に、延べ30以上のイベントのほか、飲食店などで幅広く利用されている。

 ―4月には大阪支社を設立した。

 大阪・関西万博という世界的なイベントに関わる企業として、今後さらに増えるであろう各種企画を有機的に連携させ、日本において大阪がWeb3による地域活性化のモデル都市になるようサポートしたい。

 大阪金融都市構想に基づく行政の支援も受け、大阪・関西でさまざまなチャレンジを進めていきたい。多くの企業や自治体と一緒に、大阪・関西万博のみならず、大阪から日本全体を盛り上げていく覚悟だ。

 ―今後の取り組みは。

 現在進めているのが「ソウルバウンドトークン(SBT)」と呼ばれる分野への技術応用だ。これは他人に譲渡できない唯一のデジタル身分証のようなもの。関西国際空港に到着した観光客にSBTを配り、その訪問先で特典を受け取るときに役立ててもらえるような使い方を考えている。

 ―万博後の業界の見通しは。

 26年にはデジタルウォレットが一般の人々にもごく普通に使われる段階に入ると思う。そのときには、現在の「web3」という言葉すら使われなくなっているのではないか。テクノロジーの社会実装に向けて貢献していきたい。(了)<6758>

 

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