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〔深読み米国株〕S&P500、高値更新はお預け中=足を引っ張る銘柄は?

2023年12月08日 20時10分

EPA=時事EPA=時事

 ナスダック総合指数が11月29日に昨年7月以来の高値に駆け上がったのに続き、12月6日にダウ工業株30種平均も今年最高値を更新した。一方、S&P500指数は12月1日に4600に肉薄したが、7月に付けた今年最高値はその上の4607.07だ。

 S&P500はアップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、エヌビディア(NVDA)、テスラ(TSLA)など「グレートセブン」と呼ばれる超大型7銘柄の構成比が約3割を占めている。7銘柄の騰落が先物を振り回すことを考えると、計算上の指数構成比を超える影響がありそうだ。

 アップルなど5銘柄は10月以降に今年最高値を付けたが、テスラの12月7日終値は7月の今年最高値を1割ほど下回り、S&P500の足を引っ張っている格好だ。

 米国株の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は12月6日付で「マスク氏のテスラ株売りはあるのか」と題する記事を配信。X(旧ツイッター)の経営状態を分析した上で、創業者のイーロン・マスク氏がテスラ株の換金売りに動く可能性について考察している。

 5日付の記事「自動車株のバリュエーションの謎」では、テスラについて、PER(株価収益率)が「非常に割高だ」と指摘。年率約30%の利益成長が見込まれる点ではテスラも中国の電気自動車大手BYD(BYDDY)も同じだが、PERはテスラが60倍、BYDの米国預託証券(ADR)が14倍と大きく開いている。

 ちなみにトヨタ<7203>やゼネラル・モーターズ(GM)、フォルクスワーゲン(VOW)のPERはいずれも1けた台にとどまる。テスラが上値を伸ばすには、BYDやトヨタ、GMなど他の自動車メーカーとのPER格差をさらに広げるほど強烈な買い材料が必要ということになる。

 しかも、米WTI原油先物は12月7日に1バレル=68.80ドルと9月今年最高値を約3割下回る水準に下落した。ガソリンの値下がりが顕著になれば、トヨタやGMなど伝統的な自動車メーカーの優位性が増す。

 S&P500はオープン投信や上場投資信託(ETF)など積み立て商品の定番指数でもある。テスラの値戻しの遅さが投資家を悩ませる状況がもう少し続きそうだ。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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