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〔深読み米国株〕◎金利低下でもダウ優位=物価も株式市場も正常化の方向へ

2023年12月01日 15時30分

AFP=時事AFP=時事

 米国長期金利の指標となる10年物国債の利回りが低下基調を強め、10月の一時5%超えから11月29日には4.2%台半ばに急低下した。11月の利回り低下幅は2011年8月以来の大きさだった。一方、理屈通りに動かないのが株式市場の常で、直近のダウ工業株30種平均はIT株主力のナスダック総合指数より上昇率が大きい。

 11月30日発表された10月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比3.0%増と9月の3.4%増を下回り、2021年3月以来の低い伸びとなった。雇用統計(3日発表)と消費者物価指数(14日発表)の下振れで広まったインフレ沈静化観測を補強する内容だった。

 連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め局面が終わったとの見方が市場金利低下を促すところまでは定石に沿った展開と言える。しかし、金利低下がPER拡大を促し、成長期待の大きいIT関連銘柄が急騰するという投資の教科書にある定説は今のところ怪しい。

 昨年末から今年11月末までの上昇率はナスダック指数が35.9%、S&P500指数が19.0%、ダウが8.5%とナスダック指数の独走状態だ。ところが、8月末を起点とする直近3カ月では、ダウの3.5%に対して、ナスダック指数は1.36%とS&P500の1.33%をわずかに上回る程度だ。起点を米雇用統計公表前の11月2日に取っても、各指数の上昇率はダウが7.5%、ナスダック指数が6.9%、S&P500が6.5%と、ダウの優位は変わらない。

 米国株情報の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は11月29日、「上値追いが期待できる優良7銘柄」と題する記事を配信した。ナスダック総合指数のコア銘柄と位置付けられるアマゾン・ドット・コム(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)といった超大型IT株のうち、同記事の7銘柄に含まれているのはアップル(AAPL)だけ。残り6銘柄はユナイテッドヘルス・グループ(UNH)、スターバックス(SBUX)、ヒューマナ(HUM)など。このうちユナイテッドヘルスは早速、11月30日のダウを1銘柄で118ドルも押し上げた。

 インフレや金融政策を基にITやサービス業などセクター全体が一斉に浮き沈みする相場から、業績や配当、株価チャートなど個別銘柄の特性を見極める相場へ局面が変わってきた可能性がある。地道な銘柄研究が報われる相場になるとすれば、物価と同様に株式市場も正常化に向かっているとも言えるだろう。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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