〔深読み米国株〕◎米小売り大手が苦戦…年末商戦データがFRBに政策転換促進へ
2023年11月22日 10時10分
米国で今週末から年末商戦が始まる。過熱状態が続いた個人消費の「正常化」がデータとして確認できれば、先行きの金融政策について「データ次第」と繰り返してきた連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを続ける理由はなくなる。
感謝祭翌日の11月24日は、1年で消費が最も活発になるブラックフライデー。週明け27日にはネットショッピングが盛り上がるサイバーマンデーを迎える。クリスマス前まで続く年末商戦は個人消費が7割近くを占める米国の国内総生産(GDP)成長率にも大きく影響する。
全米小売業協会(NRF)は、今年の年末商戦期間をカバーする11~12月の売上高の増加率を前年比3~4%と推計し、コロナ給付金バブルだった2021年に記録した12.7%をピークに2年連続の減速を予想する。コロナ禍前の2019年が3.8%なので、巡航速度に戻る形だ。
一方、ホームセンター大手ロウズ・カンパニーズ(LOW)が21日の取引開始前に開示した8~10月期業績は既存店売上高が7.4%減と大幅に落ち込み、通期の売上高予想を約860億ドルと、従来予想の下限だった870億ドルを下回る水準に減額。株価は3%を超える大幅な下落に見舞われた。
同日には家電量販店のベスト・バイ(BBY)も第3四半期(8~10月期)の市場予想を下回る減収と通期の売上高予想レンジの減額修正を発表し、個人消費の低調さをうかがわせた。
昨年の年末商戦の売上高は5.4%増とNRF予想の6~8%増に届かなかった。21日のロウズやベスト・バイの減額修正からは、過度の金融引き締めによる個人消費の急速な冷え込みが懸念される。
SMBC日興証券は11月6日付リポート「2023年年末商戦の見通し」で、「昨年に続き苦戦を強いられる可能性がある」と予想。賃金上昇ペースの鈍化や貯蓄率の低下を踏まえ、実質個人消費は24年1~3月期に年率0.7%へ明確に鈍化すると予想している。
金融引き締めの効果がデータとして確認されれば、FRBは政策変更に動くだろう。利下げを織り込んで金利低下が進めば、ITなどグロース銘柄がPER調整の重圧から解き放たれることになる。(編集委員・伊藤幸二)(了)