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〔深読み米国株〕◎定まらない金利シナリオ…次回FOMCはハト・タカ混在に

2023年11月10日 19時40分

EPA=時事EPA=時事

 米国株は不安定な長期金利に振り回されている。金利が落ち着かない原因の1つはパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長ら政策当局者の発言から方向感がうかがえないためだろう。FRB高官発言に一喜一憂する相場は最短でも次の連邦公開市場委員会(FOMC、12月12~13日)まで続きそうだ。

 ナスダック総合指数は8日まで9営業日連続で合計8.4%高と急伸し、S&P500指数も同日まで8連騰した。ナスダック総合指数の9連騰は2021年11月8日まで11日続伸以来の連続高だった。

 最大の買い材料は金利先高観の後退だった。FOMC後の11月1日の記者会見でパウエル議長は追加利上げに慎重なトーンを強め、3日公表された10月の雇用統計が下振れすると、10月末に4.9%近かった10年物国債の利回りが8日に4.5%割れまで急低下。金利低下が買い材料となる大型グロース株主導でナスダック総合指数は上値を追った。

 ただ、パウエル議長が9日の講演で「さらなる引き締めが必要になれば、追加利上げを躊躇しない」と発言すると、市場は一転して金利上昇・株価下落で反応した。1日の記者会見から6営業日後にパウエル氏の発言内容が「ハト」から「タカ」に変わったことになる。

 大和証券の末廣徹チーフエコノミストは「タカ派過ぎれば株価などに下方向のリスクが高まり、ハト派過ぎれば後に再利上げを迫られるリスクが高まる」と、パウエル議長が「1人2役」を演じる理由を分析する。12月FOMCについて末廣氏は「利上げ見送りの一方、2024年の利下げ見通しを弱めるなどタカ派的なメッセージを発する」と予想している。

 7日にはボウマンFRB理事が追加利上げが必要となる可能性が高いと述べ、ウォラーFRB理事は第3四半期の国内総生産(GDP)成長率が4.9%の高率だったことを「爆発的」と表現した。半面、シカゴ連銀のグールズビー総裁はFRBがインフレ沈静化に「前進」したと強調し、利上げ終了ムードを強めた。インフレに対する政策当局者の見解がバラバラである以上、市場の金利シナリオが収束するはずもない。

 米国株の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は8日付で「荒波を乗り越える『全天候型』7銘柄」と題する記事を配信。パウエル氏の意図に反して景気がハードランディングしてもアウトパフォームが期待できる銘柄について解説している。

 同記事は現地の独立系調査会社によるスクリーニング結果を紹介した。高金利と経済成長の鈍化という逆風を乗り切れそうな銘柄としてプロクター&ギャンブル(P&G)、F5ネットワークス(FFIV)をピックアップしたが、アマゾン・ドット・コム(AMZN)などグレートセブンと総称される巨大テック銘柄は含まれていなかった。(編集委員・伊藤幸二)

 

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