〔深読み米国株〕◎銀行株、今年は日米で逆行中=米国も日本に続き「持たざるリスク」か
2023年09月29日 12時30分
今年は日米の株式市場で、銀行株が対照的な値動きを示している。日本では、日銀の金融政策修正で市場金利が上昇するとの期待が銀行株を押し上げてきた。一方、米国では金利上昇に対する懸念が銀行株の悪材料となり、同じ金利上昇という材料が日米で「期待」と「懸念」と逆に受け止められてきた形だ。
9月28日時点の日米株価指数を昨年末と比べると、大型IT銘柄で構成するナスダック100指数が34%高と大幅に上昇し、東証株価指数(TOPIX)の24%高を大幅に上回る。しかし、日本でも積み立て投資に人気のS&P500は12%高にとどまっている。
TOPIXを押し上げたのも、S&P500の足を引っ張ったのも銀行株だ。
日本では、日銀前総裁の黒田東彦氏の退任を控えた3月頃から長短金利操作とマイナス金利を組み合わせた大規模緩和策が修正されるとの見方が台頭。「金利復活」による融資採算改善を先取りする形で銀行株が買い進まれ、TOPIXを押し上げた。東証の業種別指数「銀行業」は昨年末比38%高と、ナスダック100指数を上回る上昇率だ。
米国の銀行株は値動きが思わしくない。S&P金融株指数は昨年末比2.2%安にとどまり、S&P500に組み入れられたIT銘柄の目覚ましい値上がり分を削り取っている形だ。
米国株の投資情報を日本語で伝える「バロンズ・ダイジェスト」は9月27日午後、「弱気が大勢の銀行株で特に割安な5銘柄」と題する記事を掲載した。銀行株が保有債券価格の値下がりや高金利による融資の減少、規制強化といった多くの悪材料に包囲されている状況を伝えている。
ただ、同記事は銀行株が悪材料の大半を織り込んでいると指摘。銀行株の水準は永続的な収益低下を示唆しているが、「そうなる可能性は極めて低いと考えている」とする現地アナリストの見解を紹介し、最も割安な銀行株としてUSバンコープ(USB)など5銘柄を挙げている。
日本では多くの機関投資家が銀行株を市場平均を下回る保有比率にとどめる「アンダーウエート」としてきた。このため、銀行株が上昇してTOPIXを押し上げてきた際、「持たざるリスク」に直面し、「慌てて銀行株の組み入れを増やす動きが広がった」(国内運用会社)という。
米国のアクティブファンドも現在、「銀行株をアンダーウエートにしている」(外資系証券)という。米国銀行株が反転局面に入った際、日本と同様に持たざるリスクに直面する投資家は多そうだ。(編集委員・伊藤幸二)
◆日米株価指数の比較(9月28日終値の昨年末比)
東証業種別指数「銀行業」 +38.37%
ナスダック100指数 +34.40%
TOPIX +23.99%
日経平均株価 +22.14%
ナスダック総合指数 +26.13%
S&P500指数 +11.99%
S&P金融株指数 -2.22%