〔深読み米国株〕迫るFOMC、利上げ予想と距離を置く意味
2023年09月08日 18時30分
次の連邦公開市場委員会(FOMC)は9月21~22日に開催される。それまでは、経済統計や連邦準備制度理事会(FRB)高官発言を振り返りながら追加利上げの有無を予想する相場が続くことになる。
取引所が開いているのは年間およそ250日あるが、相場は連日、乱高下しているわけではない。9月7日までの直近1年では、S&P500の終値が前日比で1%以上動いたのは86回、2%以上に限れば16回にとどまる。ここ1年では、165営業日はS&P500の変動率が1%に満たず、特に上げたわけでも下げたわけでもなかった。市場参加者の強弱感がぶつかり合い、均衡している状態だ。
米国株投資情報の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は9月3日、「株式市場の上昇は続くのか?トップストラテジストが展望を語る」と題する記事を掲載した。同記事は目先の株価見通しについて、今後の景気動向と米連邦準備制度理事会(FRB)次第であるとしてウォール街のトップ・ストラテジストたちの意見が分かれている現状を紹介した。
米国株は日々の市況記事の通り、FRBによる利上げ続行への懸念が再燃する日もあれば、早期利下げ観測が強まる日もあり、足元の株価は方向感が定まらない。しかし、相場が同じ位置で立ち止まることはなく、次の均衡点を探して突然動きだすものだ。
SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは9月7日付のリポート「為替・外債デイリー」で、9月下旬の「大波乱」の可能性を指摘した。
同リポートは、ドルの他通貨に対する強弱をみるICEドル指数やユーロ・ドル相場、S&P500、ナスダック総合指数のそれぞれについて、一目均衡表で9月中旬から下旬にかけてトレンドの加速や転換を示唆する「雲のねじれ」が生じることに着目。「ドル高と株安の加速」または「ドル高傾向と株安傾向が反転」が想像されるとしている。さらに、ドルの対人民元レートが2022年11月高値超え目前であることを挙げ、「ドル高が更に進む可能性の方が高そうだ」としている。
先のバロンズ・ダイジェスト記事によると、弱気派も強気派も根拠は経済が好調である点で共通しているという。強気派は経済が堅調に推移することで個人消費が維持され、企業の利益成長が可能になると考えている。弱気派は経済が好調すぎることでFRBが来年も金融引き締めを続けることを心配している。
株価予想は好調な経済がFRBをどう動かすかという問いに帰着するように見える。しかし、今後の金融政策についてパウエルFRB議長は「データ次第だ」と繰り返しており、この議論を続けているうちに、いつの間にか問題はFRBが経済を刺激するのか冷やすのかに入れ替わり、無限ループに陥ってしまう。
相場が気迷いの局面にあるこの時期、金融政策そのものの予想からは距離を置いてみたい。相場が上げた場合は利益確定か買い増しか、下げた場合は損切りか押し目買いかを練っておく。相場が動かない期間こそ投資家に与えられた貴重な作戦タイムだ。(編集委員・伊藤幸二)(了)