〔深読み米国株〕S&P500、昨年末比17%高=それでも金利上昇を警戒すべきか
2023年09月01日 17時43分
2023年は世界の株式市場で金利上昇が懸念材料とされてきた。しかし、1年の3分の2が終わった8月末時点で米国や日本、欧州の主要株価指数は軒並みプラスを確保している。上げ相場のまま年末まで逃げ切るのか、もみ合うのか、どこかで腰折れするのか、投資家にとって悩ましいところだ。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は8月25日の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で追加利上げに言及した。しかし、投資家が待望する安値拾いの好機は訪れず、8月はS&P500指数、ナスダック総合指数ともに2%前後の小幅安にとどまった。
8月末の主要株価指数の前年比上昇率は次の通り(▲はマイナス)。
・NASDAQ総合指数(米国) 34.1%
・TOPIX(日本) 23・2%
・加権指数(台湾) 17.7%
・S&P500(米国) 17.4%
・DAX(独) 14.5%
・CAC40(仏) 13.0%
・STOXX600(欧州) 7.8%
・SESEX(インド) 6.6%
・BOVESPA(ブラジル) 5.5%
・上海総合指数(中国) 0.1%
・香港ハンセン指数 ▲7.1%
金利上昇に弱いはずのグロース(成長)銘柄の構成比が大きいNASDAQ総合指数は上昇率が3割を超え、他指数を圧倒している。日銀による金融政策変更に対する懸念がくすぶる中で、TOPIXも大幅に上昇している。欧州中央銀行(ECB)も9月14日の定例理事会での利上げ続行が警戒されるが、欧州主要企業を網羅するSTOXX600は約8%高と堅調だ。
では、これからも投資家は金利を気にしなくていいのか。
米国株の投資情報を伝える「バロンズ・ダイジェスト」は9月1日、「企業収益に忍び寄る金利上昇の影」と題する記事を掲載した。
同記事は「金利上昇はすでに収益を圧迫している」として、S&P500指数を構成する企業の第2四半期の1株当たり利益が前年同期比4%減少し、支払い利息1ドルに対する営業利益は7.6ドルと、ピーク時の10ドル強を下回っていることを紹介。その上で「金利上昇による経済へのダメージは通常、遅れてやってくる」としている。
ただ、今のところS&P500の株価収益率(PER)は予想ベースで約20倍で横ばいが続いている。配当利回りは1.5%台半ばと、1年前とほぼ同じで、減配を織り込んだり、金利上昇による配当利回りの優位性低下を示したりする様子もない。
市場で古くから語られる「株価は半年先を読んで動く」が正しければ、仮に7~9月期、10~12月期の企業業績が低迷しても、株価が織り込んでいるのが、利上げ停止を前提とした2024年1~3月期の業績や経済環境である限り、相場が崩れる原因にはならないだろう。むしろ、7~9月期業績に軽くブレーキが掛かった方がFRBによる早期利下げ観測が強まり、株価にはプラスに作用する可能性がありそうだ。足元の業績と株価を分けて考えてみたい。(編集委員・伊藤幸二)