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〔深読み米国株〕パウエルFRB議長の敵はエヌビディア?

2023年08月18日 18時00分

EPA=時事EPA=時事

 来週は8月23日に半導体大手エヌビディア(NVDA)の決算発表が予定され、25日には経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演する。エヌビディアの業績成長に対する市場の期待は高く、好決算が株価を押し上げてインフレ長期化や追加利上げ観測を増幅する展開になる可能性がある。

 エヌビディアは今年の米国市場の一番出世銘柄だ。8月18日終値は433.435ドルと、昨年末の3倍に相当する。時価総額は1兆ドルを超え、米国上場株で4位だ。GAFAMと総称されるアップル(APPL)やアマゾン(AMZN)など超大型IT株との連動性は高く、決算発表を機にエヌビディアがS&P500指数やナスダック指数を左右する公算が大きい。

 「バロンズ・ダイジェスト」は8月17日早朝、「エヌビディアに楽観的になる三つの理由」と題する記事を配信。決算発表を控えたエヌビディアの目標株価引き上げが相次いだことを紹介した。同記事によれば、複数のアナリストがデータセンター向け半導体売上高の増加を想定し、目標株価を上場来の最高値となる500ドルに設定している。

 アナリストの強気予想に沿った決算内容であれば、短期的な上げ下げはあっても、株価は好業績に見合った上昇基調を描く可能性が高い。

 一方、FRBは目下、しぶといインフレとの闘いの終盤に入っている。大方の市場参加者は最終コーナーを通過してゴールまでの直線を駆け抜けている様子をイメージしていることだろう。

 しかし、株価上昇は資産効果を通じて個人消費に燃料を投下することになる。株価が上がればインフレ沈静化による金融引き締め局面のゴールは遠くへ移動することになりかねない。

 米10年物国債の利回りは8月17日に4.3%台へ上昇した。教科書的には、エヌビディアのようなグロース(成長)銘柄は金利上昇が強烈な悪材料となるはずだ。しかし、エヌビディア株は7月末の上場来高値から10%安の水準にとどまり、高金利に強い耐性を発揮しているのが現実だ。

 仮に9月FOMCで0.25%の追加利上げを実施したところで、株価の腰を折るのは難しいだろう。それどころか、追加利上げで金融引き締め終了観測が一段と強まって株価上昇に拍車を掛ける展開も考えられる。パウエル議長が戦っているのはインフレの衣をまとったエヌビディア株かも知れない。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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