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自動車大手、全固体電池開発本格化=EVで「ゲームチェンジ」―基盤強化へ官民総力

2023年07月13日 17時57分

時事時事

 国内自動車大手が、次世代の車載バッテリーとして期待される「全固体電池」の開発を本格化させている。電気自動車(EV)の性能を飛躍的に向上させるとされ、EVの市場シェアで後れを取る日本勢の巻き返しに向け、国も資金支援に乗り出した。官民の総力を挙げて国内での生産基盤を確立し、経済安全保障上も重要となる自動車産業への安定供給を目指す。

 「『ゲームチェンジャー』になり得る。技術を手の内に入れなければならない」。全固体電池について、自動車大手首脳は、EVを巡る国際競争の盤面をひっくり返す重要技術として、実用化に向けた研究開発の重要性を力説する。

 全固体電池は、現在主流の液体リチウムイオン電池よりも、1回の充電で走行できる航続距離が約2倍に延び、充電時間は3分の1に短縮できるとされる。調査会社の富士経済(東京都)によると、2040年の世界市場規模は21年比で1072倍の3.8兆円。西村康稔経済産業相も競争力強化へ「しっかりとした技術を保有したい」と話す。

 局面転換へ動いたのはトヨタ自動車<7203>。6月には、早ければ27年の実用化に向けて開発を加速する方針を表明。これに呼応し経産省も関連投資を含む最大1178億円の補助金支給を発表した。

 ホンダ<7267>も、20年代後半のモデルに採用を想定。日産自動車<7201>も28年度までに自社製の全固体電池搭載のEVを投入する方針で、内田誠社長は「量産へ課題はあるが、手応えは感じている」と語る。

 液体リチウムイオン電池を巡り、日本は10年代前半にかけて世界をけん引したが、コスト競争で優位に立つ中国と韓国に市場の大半を握られた。全固体電池でも開発競争は激化しており、海外勢では中国大手の上海汽車集団(上海市)、独フォルクスワーゲン(VW)などが投資を加速。既に「次の時代」(内田氏)に向けた覇権争いが始まっている。

 EVに詳しい野村総合研究所の風間智英氏は欧州や中国を念頭に「EV市場のブロック化が進んでいる」と指摘。「市場規模が小さい日本は、米国やEV普及途上の東南アジアと『仲間づくり』を進め、量産効果を高めるべきだ」と強調した。(了)

 

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