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〔深読み米国株〕◎エヌビディアは買えるか…下期のナスダック指数を左右

2023年06月30日 15時50分

EPA=時事EPA=時事

 2023年上期(1~6月)の米国株式市場はIT銘柄の人気に沸いた。6月29日時点でナスダック総合指数は昨年末水準を29.9%、ナスダック100指数は36.6%それぞれ上回り、短期間の急伸が警戒感を誘う。下期(7~12月)の相場は上期に主役だった半導体大手エヌビディア(NVDA)に大きく影響されそうだ。

 世界的にもナスダック系指数の上昇ぶりは突出し、日経平均の昨年末比27.4%高、台湾・加権指数の19.8%高、イタリア・FTSEMIB指数の17.8%高などナスダック総合指数の後を追う。機関投資家のベンチマークでは、S&P500が14.5%高、欧州主要企業を網羅するSTOXX600が7.5%なので、ナスダック指数を構成する主力銘柄への資金配分が市場平均を上回る「アウトパフォーム」の成否のカギを握っていたことになる。

 上期の出世株筆頭はエヌビディアだ。生成AI(人工知能)普及に伴って半導体需要が爆発的に伸びるとの見方から、6月29日終値は408.22ドルと昨年末比2.8倍に大化けした。ナスダック100の構成比は約5%と、テスラ(TSLA)やメタ・プラットフォームズ(META)を抜いて6位だ。

 ただ、相場全体への影響力は絶大で、ナスダック100構成比が15%超で首位のアップル(AAPL)や構成比12.7%で2位のマイクロソフト(MSFT)がエヌビディアに振り回される大小逆転の場面が珍しくない。

 エヌビディアが生成AI相場の中心銘柄に躍り出た背景には、投資家の先行き不透明感がある。生成AIについては応用範囲の広さや規制の必要性をめぐり、先進各国の政府や学者を巻き込んで議論が続いている。画期的な技術革新であることに異論は少ないようだが、経済や個別企業の収益にどう影響するかは今のところ、前提に前提を重ねた想像の域を出ない。

 このことは18世紀米国のゴールドラッシュをきっかけとしたリーバイスの躍進に重なる。当時、砂金を目当てにカリフォルニア州に大勢の人々が押し寄せた。一攫千金を成し遂げた人は少ないが、砂金掘りに好適な作業着としてジーンズが飛ぶように売れた。

 生成AIについても、投資判断に必要なキャッシュフローの将来推計もPERの試算も成長率のパラメーターを少しいじっただけで、ゴールドラッシュさながらに夢のある予想値がいくらでも作れる。生成AIも技術自体はあっという間に浸透し、生成AIの活用が企業に競争上の優位をもたらす期間は短いかも知れないが、この間に半導体が売れることだけは確実だろうというわけだ。

 米国株情報を日本語で伝える「バロンズ・ダイジェスト」は6月29日、「エヌビディア下落は安値拾いのチャンス」と題する記事を掲載した。米政府が昨年10月発表した中国への半導体輸出規制をさらに強化するとのウォール・ストリート・ジャーナル報道がエヌヴィディア株を揺さぶっているが、シティのアナリストは「買い」評価を維持している。

 6月28日は同20日の上場来高値から7.2%安だ。エヌビディアが再び高値更新を目指せば、アップルやマイクロソフトが連れ高し、ナスダック系指数も上値を追う構図が続くかも知れない。上げ相場には柱となる銘柄が必要だが、足元ではエヌヴィディアの代役となる大化け株は見当たらない。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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