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日本株、先高期待が鮮明=米中景気減速は警戒ー時事株価フォーキャスト

2023年06月30日 14時00分

 
 

 時事通信社は7~9月の日経平均株価の見通しについて市場関係者に調査し、21人から回答を得た。相場の方向感について「上向き」「調整後に上昇」など上昇を見込む回答が過半数となった。「もみ合い」や「下落」を大きく上回り、先高期待が鮮明だった。予想レンジを示した20人のうち、上限として3万7000円付近とする意見もあった。下限で3万円割れを示したのは3人にとどまった。

 株価の上昇要因としては、米国の景気回復、インフレ沈静化や利上げ終了を挙げる回答が多かった。また、企業業績の上方修正や、株価純資産倍率(PBR)向上などの資本効率改善、海外投資家の資金流入継続などの回答も目立った。

 株価下落要因では米国や中国の景気減速、インフレ長期化による米国の金融引き締め(利上げ)継続、米国株下落、為替の円高転換を挙げる回答が多かった。また、日本株が高値圏で推移していることから、短期筋による株価先物売りや利益確定売りによる需給悪化を懸念する声もあった。

 調査は6月下旬に実施した。(了)


【市場関係者の株価予想】
 市場関係者の回答は以下の通り。
①日経平均株価の7~9月の予想レンジ(方向感)
②上昇要因
③下落要因


◆新井洋子:三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ・グローバル投資ストラテジスト

①2万7900~3万6300円(上昇、着地は3万4600円)

②外需企業の円安恩恵、自動車業界の生産改善、内需企業の値上げによる利益率改善が決算で確認できる。中国など世界経済に対する回復期待がいっそう高まる。自社株買いや東証の市場改革に対する期待から、高バリュエーションが維持される。ドル円相場の円安傾向が継続される。

③世界経済の低迷や、中国経済の先行き不透明感の高まりにより、企業業績の見通しとバリュエーションが下方に修正される。


◆浪岡宏:T&Dアセットマネジメント・チーフストラテジスト兼ファンドマネージャー

①2万8500~3万4000円(下落後横ばい)
 日本株の株価収益率(PER)はここ3カ月間で約14%上昇した。一方で、米国株のPERは約7%の上昇にとどまる。圧倒的にバランスを欠いている。日本株に疎い外国人投資家が割高でも買い進めた結果とみられるので、今後の急落には注意している。米国経済が良好なら米国株回帰の動きが広がるであろうし、米国経済が停滞すれば日本企業への影響が避けられない。どちらにせよ、上値は限られよう。

②日本の製造業に重要な影響を与える中国経済が回復すること。足元マイナスとなっている実質賃金がプラスに転換し、安定的にプラスを維持すること。さらに、国内の機関投資家は、株価上昇に対して懐疑的な印象を持っているようだが、こうした姿勢が転換することで、上値に近づくだろう。

③中国経済の不振が続く場合。また、最近進められている株主優待を削減する動きにも注意している。


◆市川雅浩:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト

①2万9300~3万7100円(もみ合い)

②米欧で、インフレ沈静化と利上げ終了が早々に確認され、ソフトランディングが実現すること。国内では企業に資本効率改善の動きが一気に広がること。

③米欧で、インフレ高止まりがさらなる大幅利上げにつながり、景気後退入りすること。国内では企業に資本効率改善の動きが広がらず、海外投資家の期待が失望に変わること。


◆井出真吾:ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト 

①3万0000~3万4000円(下向き)

②米国などの物価上昇が落ち着く、あるいは物価や金利が上昇する中でも景気が強さを見せる場合。空売りのポジションはまだ残っていそうで、踏み上げ的な上昇も考えられる。

③米国で年内の利下げがないことが現実味を帯び、「利上げはあと1回だろう」と高をくくっていた向きに失望感が出ること。世界的に景気減速感が強まりそうで、米国ではマイナス成長の可能性もある。今のような米株の高バリュエーション状態が長続きすると考えるべきではない。


◆益嶋裕:マネックス証券マーケット・アナリスト 

①3万0000~3万4500円

②米国の景気回復(経済指標の改善)と、それでも米連邦準備制度理事会(FRB)が過度な利上げをしないこと。日銀の緩和継続。

③FRBの引き締めが継続され、米景気の回復がストップ。日銀が引き締め政策に転換。


◆糸島孝俊:ピクテ・ジャパンストラテジスト 

①3万0000~3万5000円(もみ合い) 

②米国株式(ナスダックなど)の上昇、予想EPSのモメンタム改善など。

③米国株式(ナスダックなど)の下落、予想EPSのモメンタム悪化など。


◆野坂晃一:証券ジャパン調査情報部副部長 

①3万0500~3万3500円(中段もみ合い)

②6月19日ザラバ高値(3万3772円89銭)からの急速なスピード調整の反動高が予想されるが、高値更新は難しそうだ。

③米国株安や為替トレンドの円高方向への転換。米国では逆イールドが拡大し、年後半の景気や企業業績悪化が懸念され、S&P500指数の下落の余波が日本株を押し下げそうだ。ただ、東証のPBR改革が株価を下支えし、下げ幅は大きくならないとみている。


◆北原奈緒美:内藤証券投資調査部シニア・アナリスト 

①3万1000~3万3500円(小休止後、上昇)

②コロナ流行の逆風下で稼ぐ力が向上した日本企業が評価され、大勢では上昇基調が続くとみている。向こう3カ月間は4~6月期の決算発表期に積極的な株主還元を打ち出す企業が出てくると予想する。東証の企業価値向上の要請に呼応し、これまで増配や自社株買いに積極的ではなかった企業が株主還元に力を入れる方針を示してくると、株価に大きなインパクトがあるだろう。 

③投資家の多くが強気に傾いてきたので、いったん利益確定売りが増えそうだ。公的年金基金や機関投資家のリバランスに伴う売りも予想される。6月の高配当で人気を集めた銘柄の買いも一服する。しかし、企業業績が上向くとともに、物価上昇や賃上げの動きも目立ち、デフレ脱却が見えてきたので、節目の3万円を下回る可能性は低いのではないか。


◆三井郁男:アイザワ証券投資顧問部スペシャリスト・ファンドマネージャー 
①7~8月:3万1000~3万3500円(調整)
 9月  :3万2500~3万4000円(↗)

②欧米のインフレ率が徐々に低下する。世界景気が大幅に悪化しない。上期の業績が会社計画比プラスアルファで推移する。海外投資家の買いが継続し国内投資も買い越し基調になる。

③インフレが収まらず利上げが続き景気抑制の圧力が強まる。グローバル景気の悪化が輸出企業の業績を圧迫する。資産効率の改善や賃上げの継続が期待外れになる。海外投資家が売りに回る。


◆小高貴久:野村証券シニア・ストラテジスト

①3万1000~3万4000円(上向き)

②日米で4~6月期決算発表における企業業績が市場予想を上回り、米国景気減速懸念に対して、企業業績はここから好転する見通しが強まる場合。米国の7~9月期以降の景気が減速・後退ではなく、インフレが減速しながらも景気が順調との見方が強まる場合。

③米国景気の失速、中国景気の失速。日銀がサプライズに政策修正を行い、長期金利が急騰して株式市場が混乱する場合。


◆小林真一郎:三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員 

①3万1000~3万4000円(もみ合い)

②FRBの金融引き締め見送り(インフレ圧力後退)、米株の上昇、中国経済の改善ペース加速、ウクライナ情勢など地政学リスクの後退。

③FRBの追加金融引き締め(インフレ圧力の高まり)、米株の下落、日本銀行の金融政策引き締め。


◆香川睦:楽天証券経済研究所チーフグローバルストラテジスト 

①3万1000~3万4000円(高値圏でのもみあい)

②国内でデフレ脱却の動きが強まり、設備投資やインバウンドの増勢で内需回復の機運が強まる。名目GDPの増勢が続く。経営改革や業績見通し面でポジティブなニュースフローが続く。米国市場で金利ピークアウト感が強まり、ソフトランディング期待が維持される一方、「生成AI相場」が持続する場合には、ナスダック主導の株価復調持続が見込まれる。

③日経平均の高値警戒感が強まり、利益確定売りが先行して下値を試す動きに転じる。バフェット効果は賞味期限切れを迎え、相場は現実的な業績見通しの向上を待つ展開に。米国で利上げ継続観測がくすぶり、オーバーキル不安に伴う景気後退懸念が再燃。年前半にナスダック相場をけん引したビッグテック株が一服商状となり、米国株はもみあいに転じる。リスク選好姿勢が後退し日本株の上値が重くなるリスクがある。


◆服部誠:丸三証券専務取締役(エクイティ本部長) 

①3万1000~3万4500円(3月16日安値~6月19日高値までの上げの調整を経て上値トライ)

②米・欧・中との相対優位性や、日本固有の材料に着目した海外マネーの流入継続(資本効率改善に向けた変革期待、株主還元強化、設備投資の積極化、ゼロ金利政策の継続など)。1ドル=140円台維持。自動車産業を中心に通期業績見通しの上方修正。経済安全保障上の観点から国策と位置付けられる半導体、自動車(EV化)、FA・ロボットが相場をけん引。

③米国のインフレ長期化・景気減速に伴う米株の値幅調整。4~6月期の決算を受けて市場の期待ほどEPSが伸びない。日銀の金融政策見直しに伴う急激な円高。予期せぬ地政学リスクの顕在化。


◆壁谷洋和:大和証券チーフグローバルストラテジスト 

①3万1000~3万5000円(もみ合いからの水準切り上げ) 

②日本株をアンダーウエートしてきた海外投資家からの買いが株価を押し上げてきたと推察されるが、日本株に割高感は生じていない。デフレからの脱却を意識した、息の長い資金流入は継続する可能性が高い。日本株の過小評価の是正は、まだ始まったばかりとの認識である。

③米国の利上げ打ち止めの思惑が外れ、利上げ継続となった場合や、米商業用不動産リスクが顕在化した場合には、米国発で相場が不安定化する可能性がある。また、中国景気の減速は、日本のみならず、世界経済にとってもマイナス材料となるため要注意。


◆山本信一:岡三証券シニアストラテジスト 

①3万1500~3万4000円 

②4~6月期決算で半導体業界の底入れ期待が高まる。インバウンドのさらなる拡大など。

③欧米の景気引き締め効果が大きくなり、世界経済が悪化。


◆大塚竜太:東洋証券ストラテジスト

①3万1500~3万4000円(上昇トレンド)

②日本経済がデフレから脱却し、企業や日本経済全体が成長できる環境になりつつある。資本効率向上に向けた東証の働きかけも株高につながっている。

③短期筋による先物の売りなどにより、一時的に需給が売りに傾くこと。第1四半期決算が期待値に届かないと、売られる場面があるかもしれない。


◆三宅一弘:レオスキャピタルワークス経済調査室長

①3万1500~3万4500円(↗)

②米国の金融引き締め(利上げ)終了、米景気のリセッション回避。日本景気の拡大と金融緩和継続。

③米国の金融引き締め継続下で、銀行破綻増加、米景気失速。日銀の早期の金融引き締め。


◆大谷正之:証券ジャパン調査情報部部長 

①3万1500~3万6000円(基調は上向き)

②第1四半期決算が発表され、第2四半期以降の業績がある程度見通せるようになれば、収益拡大への期待から高値を取っていく。「先端半導体」「電気自動車(EV)」「脱炭素」の三本柱とそれに関わる設備投資の伸びが世界的に続くだろう。

③需給の悪化。


◆伊井哲朗:コモンズ投信社長

①3万2000~3万6000円(上昇)

②海外投資家の買いが継続するとみている。中国の地政学リスクを嫌い、日本へ資金を移す動きがある。自社株買いや配当金の総額は2023年度に過去最高を記録する可能性が高く、株主重視の姿勢が海外勢に好感されるだろう。海外勢の多くは日本株への投資配分比率が小さく、買い余力はまだまだ大きいとみている。

③大幅に下がる可能性は低いとみている。調整があっても年内に株高の第2幕が訪れるだろう。


◆安田光:SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト 

①3万2000~3万7000円(上昇)

②7月に発表される所定内給与で賃金上昇傾向が確認できること。第1四半期(1Q)決算で高進捗(しんちょく)率となりアナリスト予想の上方修正が続くこと。

③7月上旬にかけて需給悪化懸念に伴う利益確定売りが進むこと。


◆藤代宏一:第一生命経済研究所主任エコノミスト 

①―(方向感を探るように上下か)

②米国では在庫調整が進んでおり、製造業は回復に向かいそうだ。FRBの金融引き締めは最終局面に入っており、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)にかけて利上げ停止観測が強まる可能性がある。 

③PBR1倍を超える銘柄も増えており、資本効率向上策などを期待した買いは一服しそうだ。内需を起点とする日本企業の業績改善ペースも今後は鈍りやすい。

 

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