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〔深読み米国株〕ナスダック指数、さらに上値期待…人気過熱のAI株はバブルか

2023年06月09日 18時00分

EPA=時事EPA=時事

 ナスダック総合指数が今週も騰勢を保ち、6日の終値は今年最高値を更新。月足で2月から4カ月連続高と、上値追いが続いている。AI(人工知能)ブームとともにナスダック総合指数の押し上げてきたエヌビディアなどIT関連株の人気過熱も指摘されるが、バブル状態とは言えず、ナスダック総合指数はさらに上値を期待できそうだ。

 米シリコンバレー銀行(SVB)破綻(3月9日)後の安値からの6月8日までの上昇率はナスダック総合指数が18.8%、S&P500が11.4%とナスダック総合指数の上昇が著しい。そこで、ナスダック総合指数の割高さを測るため、両者の比を取ってみた。日経平均株価をTOPIXで割ったNT倍率にならった「NS倍率」である。大型株全体とIT関連株のバランスとも言える。

 NS倍率はSVB破綻翌日に2.884だったが、その後はエヌビディアなどの急騰を反映して5月16日に節目の3.000を突破。6月8日は3.083と、3.100乗せをうかがう位置にある。

 ただ、昨年8月のNS倍率は月間平均で節目の3.000を超えていた。NS倍率だけで判断すれば、足元のナスダック総合指数は高水準ではあるが、循環的な変動の範囲内にあり、S&P500対比で決して割高ではないことになる。

 米国株の投資情報を日本語で報じる「バロンズ・ダイジェスト」は9日付で「AI株高騰はバブルではない」と題する記事を掲載した。直近のAI関連株の高騰に対する市場の警戒感を踏まえたものだ。

 同記事はナスダック総合指数のPER(株価収益率)が27倍と、2000年初頭のドットコムバブルの60倍超に遠く及ばないことを指摘している。エヌビディアであれば、足元の株価が来年末には4割値上がりして530ドルに達する可能性があると言う。PER45倍維持と2025年の予想EPS(1株当たり利益)11.84ドル達成で530ドル到達が実現する。この場合、成長株の評価に利用されるPEGレシオ(PER/EPS成長率、いずれも予想ベース)は1倍割れと、S&P500の2倍超を大幅に下回ることになる。

 外資系証券の営業担当者は「金融政策や全体景気を踏まえたマクロ系のリサーチ部門から慎重なリポートが上がってくるが、顧客の投資意欲の強さを見る限り、利上げ続行も景気減速も承知の上で買っているようだ」と話している。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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