トヨタ、全固体電池を27年にも実用化=EV向け、競争力強化狙う
2023年06月13日 05時01分
トヨタ自動車<7203>は12日までに、次世代車載バッテリーとして期待される「全固体電池」について、2027~28年に電気自動車(EV)用として実用化を目指す方針を明らかにした。急速充電しやすく、走行距離を伸ばせるなどの利点があり、自社のEVの競争力強化につなげたい考えだ。
静岡県裾野市で開いた技術説明会で明らかにした。全固体電池は電気を通す「電解質」を液体ではなく固体にした電池で、世界の自動車メーカーなどが開発にしのぎを削っている。トヨタはハイブリッド車(HV)用として20年代前半に実用化する方針を掲げていたが、最近の世界的な電動車の需要動向を踏まえ、EV向けにしたという。
開発中の全固体電池は1回の充電で走行できる距離が同社のEV「bZ4X」比2.4倍で、充電時間は3分の1程度の約10分。30年以降にはさらに進化させ、距離を3倍に伸ばすことを目指す。既に量産工法の開発段階にあり、中嶋裕樹副社長は「世の中に後れを取らず、必ず実用化する」と意気込んだ。
トヨタはEVの事業戦略で、26年に年間150万台、30年に350万台を世界で販売する計画を掲げている。
350万台のうち170万台は、5月に新設した専任組織「BEVファクトリー」が企画・開発する次世代EVになるという。
全固体ではないタイプの次世代バッテリーに関しては、距離が「bZ4X」の2倍でコストは2割低く、20分以下で充電できる高性能型を26年発売の次世代EVに搭載する計画を表明。また、低コストの普及版を26~27年、高性能型と普及版の融合型を27~28年に実用化する目標も示した。
一方、水素分野では低コスト、低燃費で長寿命の次世代燃料電池システムを開発中で、26年の市場投入を目指していることも明らかにした。
説明会ではこのほか、EVにシフトレバーやクラッチペダルを取り付け、マニュアル車を運転するような感覚を疑似体験できる技術などを紹介。開発中の水素エンジンを高級車「レクサスLX」に積み、公道走行を可能にした実証車の試乗も行った。(了)