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〔深読み米国株〕◎ダウ急騰にSOX逆行…投資マネーの流れに変化?

2023年06月05日 09時30分

AFP=時事AFP=時事

 前週末6月2日の米国市場では、ダウ工業株30種平均が701.19ドル高と今年最大の上げ幅となったが、世界の半導体株の指標となるSOX(フィラデルフィア半導体株指数)は小幅に下落した。年初から半導体株を中心とする少数の成長株が騰勢を保つ一方、機械、ヘルスケアなどの比率が大きいダウの低調が続いてきたが、前週末のダウとSOXの逆行は投資マネーの流れが変わってきた可能性をうかがわせる。

 6月2日終値の昨年末比上昇率はSOXが38.3%と突出して大きく、SOXと銘柄の重複が多いナスダック総合指数も26.5%と大幅に上げている。一方、S&P500指数は11.5%高にとどまり、ダウは1.9%高と出遅れている。

 2023年は業種分散や相場環境に応じたポジション削減といった投資の定石を無視して半導体株にセクターを絞り、ひたすら買い乗せを続けることが米国株投資の「勝ちパターン」だった。

 しかし、前週末の値動きは半導体などIT関連株の買い疲れと、出遅れていたオールドエコノミー銘柄のエンジン始動を予見させる。前週末のダウ急騰に最も大きく貢献したのはキャタピラー(CAT)。前日比4.4%高でダウを115ドルほど押し上げた。ホームデポ(HD)とゴールドマン・サックス(GS)も大幅に値上がりし、これら3銘柄だけでダウは210ドル余り上昇した。

 CATなど3銘柄に共通するのは、昨年末比1.9%高と上値の重いダウよりもさらに値動きが悪いことだ。前週末こそ株価の足取りは軽かったが、昨年末比ではCATが5.4%、HDが6.3%、GSが5.7%のそれぞれマイナスにとどまっている。S&Pの業種別指数は「素材」「工業」「エネルギー」が3%前後の大幅高で、非IT関連銘柄が水準訂正に動いた形だ。

 一方、ITセクターの主力株であるインテル、シスコシステムズ、アップルによるダウの押し上げは3銘柄合計で9ドルに満たなかった。SOXを押し上げてきた半導体株の不調が単なる買い疲れなのか、相場の基調転換を意味するのは断定するのは難しいが、前週末のようなダウ上昇・SOX下落が続けば、これまで放置されていたオールドエコノミー銘柄に対する投資家の見方は変わってくるだろう。

 米国株情報を日本語で伝える「バロンズ・ダイジェスト」は6月4日付で「AIだけでない五つの重要投資トレンド」と題する記事を配信。医療の進歩やインドの台頭といった切り口を提示し、それぞれの有望銘柄を紹介している。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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