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〔深読み米国株〕ナスダック100だけ急伸…上位7銘柄で構成比55%

2023年05月26日 16時15分

AFP=時事AFP=時事

 ナスダック100指数は5月25日、前日比2.5%高の13938.53と急反発し、今年最高値を更新した。一方、ニューヨーク証券取引所全銘柄の株価を反映するNYSE総合指数は昨年末終値を下回っている。ナスダック100構成比の大きいアップルなど少数銘柄への資金集中は著しく、相場が転機を迎えるシナリオを投資家は想定しておく必要がありそうだ。

 5月22日のナスダック100指数は昨年末比27.4%高と、先進国の主要指数の中で突出して上昇率が大きい。他の米国株指数はナスダック総合指数が21.3%高、S&P500が8.12%高。ダウ工業株30種平均は1.2%安、NYSE総合指数は1.4%安にとどまる。アップルなど超大型グロース銘柄の構成比が大きくなるにつれて、株価指数の上昇率が大きくなっている。

 アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラの7銘柄がナスダック100に占める割合は昨年末に48.7%だった。今年5月25日は55.5%と半数を上回っている。

 アップルなど7銘柄の構成比が節目の50%を突破する局面では、少数銘柄への資金集中が市場関係者の話題となった。しかし、7銘柄への資金集中は止まる気配がなく、米国株市場の現状は「アップルなど超大型グロース7銘柄」と「その他大勢」と言っていい。

 米国株に限らず、上げ続ける相場はない。一方、米国の相場格言で「株価は懐疑とともに育つ」とされ、多少の不安材料を抱えていた方が上昇相場は長続きすることが経験的に知られている。

 米国株投資の情報を提供する日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は5月22日に「米最大の年金基金、アップルとインテルの持ち株削減」と題する記事を掲載した。同記事は、運用資産4550億ドルのカリフォルニア州退職年金基金(カルパース)が1~3月期に保有するアップル株の16%を売却したことを紹介している。1~3月期はアップルが27%高とS&P500の4倍近い上昇率だったため、カルパースの利益確定売りに違和感はない。

 アップルの4月以降の上昇率は6%超とS&P500の約2%を上回っている。このため、カルパースは4~6月期も持ち高圧縮が予想され、相場全体に比べて大幅に上昇した他の銘柄にも利益確定売りを広げる可能性がある。

 5月25日付のバロンズ・ダイジェスト記事「業績見通し引き上げ相次ぐ」によれば、5月はS&P500の11業種のうち10業種で、上方修正の割合が4月より多かった。アナリストによるS&P500構成企業の2023年1株利益(EPS)予想は1%上方修正された。わずか1%の上方修正だが、昨年6月から切り下がってきたEPS予想が上向きに転じた意味は大きい。一般に、増益幅拡大より増益転換の方が株価へのインパクトが強いからだ。

 S&P500ベースの業績予想の上向きはアップルなど超大型グロース銘柄を売った資金の受け皿が整いつつあることを意味する。ナスダック100に比べて出遅れているS&P500やNYSE総合指数への主役交代が視野に入ってきたかも知れない。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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