〔深読み米国株〕衰えない先高期待…機関投資家に買い余力
2023年05月19日 18時00分
米国株式市場は年初来の高値追いを続けている。連邦政府の債務上限問題やインフレ長期化による追加利上げ観測の再燃、銀行経営問題といったマイナス材料は上昇を続ける株価を前にかすみがちだ。上げ相場にありながら過熱感は薄く、機関投資家の潜在的な買い余力も大きいことから、米国株の先高期待は強い。
5月18日は米S&P500指数やナスダック総合指数が今年最高値を更新した。昨年末からの値上がり率はナスダック総合指数が21.2%、ナスダック100指数が26.5%と大きい。ナスダック系の指数は外部環境の悪化に弱いはずのグロース(成長)株の構成比が大きく、債務上限問題をはじめとする懸念材料は投資家の眼中にないかのようだ。
グロース銘柄主導の相場の土台には、投資家のリスク負担能力が大きさがある。投資家の含み損益の指標となるS&P500の52週移動平均線との乖離(かいり)率は5.67%。「大型銘柄やETFを買った投資家が含み益を得る一方、短期筋の利益確定売りを誘うほどでもない、ほど良い水準」(外資系証券)だという。
需給面でも買い余地がうかがえる。米国株の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は5月15日付で「株価が予想に反して上昇すればどうなるのか」と題する記事を掲載した。同記事は「投資家たちは相場上昇に備えていない」と指摘。ドイツ銀行のストラテジスト、パラグ・サッテ氏によれば、トレンド追随型ファンドは最近、2021年以降で初めて株式の組み入れ比率を中立をやや上回る水準に引き上げたばかりだという。他のアクティブファンドによる株式の組み入れ比率は依然として低水準とみられ、買い増しの余地はまだ大きいようだ。
一方、金利上昇によるインカムゲインの復活もプラスに作用しているようだ。米10年物国債の利回りは5月16日に3.6%台と、1年前の2.8%前後や2年前の1.6%台を上回っている。「一定の金利収入が個人の投資マインドを落ち着かせるとともに、機関投資家のリスク許容度も高めている」(同)形となっている。
先のバロンズ・ダイジェスト記事は「買いに動く機会を狙って株価の下落の下落を待っている投資家は、その機会を得られないかもしれない」と結んでいる。(編集委員・伊藤幸二)(了)