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〔深読み米国株〕「5月は売り逃げ」なしか…ファースト銀破綻の影響薄

2023年05月02日 16時30分

AFP=時事AFP=時事

 中堅商業銀行のファーストリパブリック銀行(FRC)が1日、経営破綻した。しかし、同日のS&P500指数は0.03%安にとどまり、2日の時間外取引でS&P500先物は一時プラス圏に浮上した。米国の相場格言は「5月に売り逃げろ」と手じまいを勧めるが、足元の相場を見る限り、投資家が市場から立ち去る様子はうかがえない。

 FRCが公的管理下に入ったとカリフォルニア州金融当局が発表したのが1日未明。しかし、1日のS&P金融株指数は0.27%安と小幅の下落にとどまった。

 FRC株は2021年11月に222.85ドルの最高値を付けたが、経営破綻直前の4月28日は一時3ドルを下回った。直近では、ニュージャージー州共同年金基金が保有するFRC株を今年1~3月に全て売り払っていたことが判明している。5月1日の株式市場がショック安を免れたのは「投資家のリスク回避に伴う見切りやヘッジ売りが済んで、FRCの破綻確定を待つだけの状態だった」(外資系証券)ことが大きいようだ。

 FRC破綻を消化した後も、株式市場がいくつもの悪材料や不透明要因に取り囲まれている状態に変わりはない。5月1日には、連邦政府債務上限を引き上げなければ、6月1日にも米国債がデフォルト(債務不履行)に陥るとイエレン米財務長官が発言。翌2日は豪準備銀行(中央銀行)が市場の金利据え置き予想を覆して0.25%の利上げを決定し、世界的な利上げ局面の終幕ムードに水を差す形となった。3日は連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が発表される。しかし、株式市場は動揺を見せない。

 米国株の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は2日早朝、「5月に売り逃げろ、でもすぐ戻れ」とする記事を掲載した。同記事は企業の利益率が減少するサイクルにある一方、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始は遅れる可能性があることなどを理由に今後数カ月の株価下落リスクを指摘。その上で、現在の不透明要因は「循環的」だと評価し、「新たな弱気相場を生み出す恐れはない」とみて長期的な強気相場の継続を予想している。同記事の見立てが正しいとすれば、今後の株価下落は投資家に買い場を提供することになる。

 もっとも、予想PERはS&P500が18.9倍、ダウ工業株30種平均が17.9倍、グロース(成長)株の多いナスダック100でも26.0倍。いずれも割高感や過熱感は乏しく、売り物が大量に出てくる余地が大きいようには見えない。「不安」や「懸念」がいくら報じられても、売り物が膨らまないことには安値拾いの好機は訪れないものだ。下値を切り上げながら5月の相場が進んでいくのではないか。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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