〔深読み米国株〕ナスダック指数に異変…金利低下でもIT株安の原因は?
2023年04月04日 15時30分
3日の米国市場では、10年物国債の利回りが3.4%近くに低下する一方、ナスダック総合指数は軟化した。同指数を左右する大型IT銘柄は金利低下に色良い反応を見せず、グロース(成長)株とされるIT銘柄への市場参加者の見方が変わってきたようだ。
3日はナスダック総合指数が0.27%安と小幅に下落。SOX(フィラデルフィア半導体株指数)も30ある構成銘柄のうち26銘柄が値下がりして0.94%安と、グロース銘柄の苦戦が鮮明になった。
米国株情報の日本語媒体「バロンズ・ダイジェスト」は3月27日、「アップルなどハイテク株、金利低下の効果薄か」とする記事を配信した。同記事は10年物国債と大型IT株の相関性低下を指摘し、デジタル広告や電子商取引、動画や音楽を配信するストリーミングなどの市場拡大ペースが減速し、巨大IT企業の利益の伸びが鈍化していることを紹介している。
たとえばアップルでは、今後3年間の1株利益の伸びが市場予想で年率約5.7%と、S&P500採用銘柄の水準を下回る見通し。これまで巨大IT企業の株価が金利低下を好感してきたのは高い利益成長が予想されていたためで、成長期待が後退するにつれてIT株が「金利離れ」を起こすのは当然だろう。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFEDウオッチによると、短期金利先物が織り込む政策金利の引き下げ確率は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で約54%と半数を超え、12月FOMCでは90%まで織り込みが進んでいる。連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の軸足をインフレ退治から景気への配慮に転換することを金利先物市場は想定している。
短期金利先物が9月以降の利下げ開始を織り込むとともに、IT株が長期金利低下に反応しなくなってきたことは、短期金利先物と株式の各市場参加者が描く景気シナリオに大きな差はないことを意味する。
米サプライ管理協会(ISM)が3日発表した3月のISM製造業購買担当者景況指数(PMI)は46.3と2020年5月以来の水準に低下し、企業活動が停滞方向にあることを強く示唆した。投資家にとって警戒が必要なのは株式と金利市場が異なる景気シナリオを前提に動いている局面だが、足元で株式は金利と歩調を合わせて景気減速を織り込んでいる。このため、「景気は減速方向でも株価は大崩れしにくく、強いのか弱いのか分からない相場が長期化する」(外資系証券)との見方が出ている。上値切り下げ含みのボックス相場を前提とした押し目買いと利益確定売りが得策かも知れない。(編集委員・伊藤幸二)(了)