ウォール・ストリート・ジャーナル
コモディティコンテンツ

マーケットニュース

〔深読み米国株〕金融不安でも昨年末比プラス…第1四半期決算消化後に上昇加速も

2023年03月31日 17時00分

AFP=時事AFP=時事

 シリコンバレー銀行の経営破綻やクレディ・スイス・グループ救済を目的としたUBSによる買収などで、3月の株式市場は金融システム不安に揺れた。しかし、3月30日のS&P500指数は昨年末水準を5%余り上回り、打たれ強さを発揮している。2023年第1四半期(1~3月期)決算を消化した後は、株価上昇が加速していく可能性がありそうだ。

 3月30日の主な株価指数はS&P500が昨年末比5.5%高、欧州主要企業で構成するSTOXX600が7.0%高、TOPIXが4.8%高といずれもプラス。昨年末割れは、震災後の混乱が続くトルコのISEN100が11.1%安と世界の主要な株価指数で唯一の2けたマイナスだ。金融不安は株価のマイナス材料ではあるが、上値を圧迫する程度で、投資家を投げ売りに駆り立てるほどのインパクトはないようだ。

 足元の株価の重しとなっているのは企業業績の先行き不透明感だろう。米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は3月31日に「第1四半期決算、市場の腰を折る可能性」とする記事を掲載した。アナリスト予想では、S&P500構成企業の1株利益は第1四半期に前年同期比4.6%減だが、2023年第4四半期(10~12月期)は10.6%増が見込まれるという。

 第1四半期業績がアナリスト予想から下振れしたり、企業によるガイダンス(業績予想)引き下げが続出したりすれば、第4四半期の2けた増益に対する期待が薄れ、株価には下押し圧力が増す。しかし、第1四半期が市場想定通りの減益に収まれば、投資家の目線は先へ向かい、株価は今秋以降の2けた増益トレンドに見合う水準に上がっていく可能性が出てくる。

 一方、米金融大手ステート・ストリートが3月29日発表した3月の投資家信頼感指数は「グローバル」で前月比3.8ポイント高の81.4と、昨年11月以来4カ月続けて「中立」の100を下回った。同指数は世界45カ国以上の機関投資家の株式売買動向を基に算出し、100未満であれば株式への資産配分を減らしたことになる。

 ただ、同指数は昨年12月の76.0を底に改善基調が続いており、機関投資家による株式残高削減は収束する方向にある。同指数は一方向に動く傾向があり、このまま100を超えて買い増しに転じれば、需給面で強力なプラス要因になる。「シリコンバレー銀行の破綻以降、キャッシュを増やして買い場到来に備えた機関投資家は多いが、結局は買えていない」(外資系証券)という。第1四半期の決算内容次第では、3月の金融不安局面での押し目買いが不発に終わった待機資金が株式市場に流れ込むシナリオが描けそうだ。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

ウォール・ストリート・ジャーナル
オペレーションF[フォース]