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金融システム問題がカギ=米利上げや「PBR1倍」も注目―時事・株価フォーキャスト

2023年03月31日 14時00分

 
 

 時事通信社は4~6月の日経平均株価の見通しについて市場関係者に尋ね、21人から回答を得た。昨年末の前回調査時に比べて足元の株価水準が高いこともあり、予想レンジは全体に前回より切り上がった。ただ、米シリコンバレー銀行などの破綻を経て市場が混乱した直後だけに、金融システム危機などをリスク要因として挙げる回答が多く、レンジ下限の予想値がばらつくなど不透明感が強まっていることもうかがわれた。

 株価上昇要因としては、金融不安の落ち着きや米国の利上げ停止などが挙げられている。東証がPBR1倍割れ企業に対応を求める考えを示したことで、資本効率改善への取り組みが進むとの見方も複数あった。このほか、中国の景気回復や、国内経済の正常化加速などが株価上昇につながるとの予想もあった。

 一方で、金融システム不安は下落要因としても多く挙げられており、株価の動向は金融不安次第と言えそうだ。物価が高止まりして金融引き締めが長引く事態を株安要因とする回答も複数あり、金融政策への注目度も依然高い。今回の調査では、新型コロナウイルスの感染再拡大を株価下振れリスクとする回答はなかった。

 調査は3月下旬に実施した。(了) 


【市場関係者の株価予想】
 市場関係者の回答は以下の通り。
①日経平均株価の4~6月の予想レンジ(方向感) 
②上昇要因
③下落要因


◆菊池真:ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役

①2万4000~2万8000円(下落)

②短期投資家の空売りの買い戻し。

③世界的な金利上昇の悪影響(資金調達コストの上昇、保有債券価格の下落による含み損拡大など)が、企業業績見通しに顕在化すること。特に、低格付け(信用リスクの高い)企業における悪影響が市場に織り込まれること(シリコンバレー銀行やクレディ・スイスの事例で、本来であれば市場の織り込みは進むべきところ、株式市場が「見て見ぬふり」を続けているのが、むしろ不自然)。信用スプレッドの拡大と株安の同時進行を想定(歴史は繰り返す)。


◆ 新井洋子: 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフグローバル投資ストラテジスト

①2万4700~2万9800円(もみ合い→)

②業績見通しの下落基調が止まり、年後半以降の経済の底打ち感が強まる場合

③銀行不安に対する警戒感が高まる場合(ただし、業績への影響は限定的と事後に判明することを想定)


◆井出真吾:ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト

①2万5000~2万8000円(大型連休明けごろから軟化)

②米国の景気の力強さが改めて示され、一方で、FRBが利上げを打ち止めすれば、株価は上振れするかもしれない。

③FRBの利上げは遅くとも5月で打ち止めになると思われる。日銀も4月の会合で10年債の利回りの変動幅を拡大もしくは撤廃する可能性があり、為替は円高に振れやすい。企業による23年度の業績予想は慎重な内容になりそうで、その結果、アナリスト予想も慎重になるだろう。投資家心理も悪化して2万5000円程度まで押されることはあり得る。


◆ 益嶋裕:マネックス証券マーケット・アナリスト

①2万5000~2万9000円

②米国の金融市場の混乱が収束すること。植田日銀がYCCの拡大等の金融引めを拙速に行わないこと。FRBが政策金利の引き上げを停止するメッセージを発出すること

③米国の金融市場の混乱が継続し、次の破綻先が出てしまうこと。植田日銀が早期に金融引き締めに動くこと。FRBがインフレ収束を優先し、継続的な利上げを行う姿勢を打ち出すこと。


◆浪岡宏:T&Dアセットマネジメントチーフ・ストラテジスト兼ファンドマネージャー

①2万5000~3万円(緩やかな上昇=中国経済の回復が日本株の追い風になると予想している。また、日本株の割安感が株価の上昇に寄与するとみている。ただし、円高進行、米国株下落を予想しており、これらが日本株の上値を抑えるとみている)

②米国株の下落を予想しているが、思いのほか堅調に推移する場合には、日本株の上昇ペースは急ピッチなものとなろう。加えて、円安が進行すれば上振れ余地は大きいとみている。

③一時よりは懸念が後退した金融不安が、再燃した場合には相応の株価下落となろう。さらに、そうしたなかで業績に対する不安も高まれば株価は反発のきっかけを作れず、軟調な展開が続く形となろう。


◆市川雅浩:三井住友DSアセットマネジメントチーフマーケットストラテジスト

①2万5700~3万2700円(もみ合い)

②米欧を中心に、金融不安とインフレ懸念が急速に鎮静化し、景気後退回避への期待が高まること。

③米欧を中心に、金融不安がくすぶるなかでインフレが高止まりし、金融政策の舵取りと景気の先行きに対する不透明感が一段と強まること。


◆糸島孝俊:ピクテ・ジャパンストラテジスト

①2万6000~2万8500円(緩やかな下落イメージ)

②さらにネガティブなニュースがないこと。具体的には、ロシア・ウクライナの停戦合意がされれば、上限2万8000円を上に抜ける。信用収縮が全く起きず、信用拡大した場合も上限を上抜けする。

③金融不安は治りつつも、ゆるやかに信用収縮へ向かい、景気減速懸念から企業業績の来期(4月以降)のEPS予想がコンセンサスを下回る。


◆香川睦:楽天証券経済研究所チーフグローバルストラテジスト

①2万6000~2万9000円

②米国市場の利上げ停止期待で米国株が上昇。中国でアフターコロナの景気回復が進み、日本国内では賃金上昇に伴う内需拡大期待が強まる。為替市場ではリスクオン(リスク選好)に伴うドル買いで円高傾向に歯止めがかかる可能性があり、業績見通しの支えとなりやすい。東証による「PBR1倍割れ企業に対する経営改善要請」が、ジャパンバリューの物色を通じて日本株を下支えする可能性も。

③米国市場で銀行不安が払拭されない一方、インフレ抑制を目的とした利上げが継続し米国株が下落。中国では不動産不況や雇用悪化の影響で景気回復が頭打ちとなり、国内では賃金が上昇しても先行き不安感で内需が盛り上がらないリスクがある。為替市場で円高傾向が進行すれば、外需企業の業績見通しの下押し圧力となりかねない。


◆大塚竜太:東洋証券ストラテジスト

①2万6000~2万9000円。(上向き)

②国内経済は本格的なリオープンが期待され、インバウンド消費も伸びそう。原油や円相場も比較的落ち着くなど、コスト高も解消方向にある。新年度に入れば需給改善も期待できる。金融システム不安は、ドイツ銀行の問題を経て打ち止めになるのではないか。

③可能性は小さいが、米国景気のハードランディングが想定される状況になること。ウクライナ情勢の混迷もリスクだ。決算発表で新年度の業績見通しが保守的になり、嫌気される場面もあるかもしれない。


◆ 三宅一弘:レオス・キャピタルワークス経済調査室長 

①2万6000~2万9000円(もみ合い、期末にかけてジリ高予想)

②米国の利上げ停止確認、利下げ期待の上昇。米国の金融ショックは小康状態へ

③米国の銀行破綻の増加など金融ショックの拡大。急激なドル安・円高


◆小高貴久:野村証券シニア・ストラテジスト

①2万6000~2万9500円(やや上昇=6月末2万8000円予想)

②米国インフレ沈静化により、利上げの終了だけでなく年内利下げの可能性も浮上する。米欧金融機関の問題が沈静化する。米国企業業績が4~6月期に増益に転じるとの見方が強まる。日本企業の挽回生産が加速する。

③米欧金融機関の問題が続き、システミックリスクにはならない中小金融機関の経営難が追加で連続的に報じられる。日米で1~3月期の経済成長率がマイナスに陥る。急激に円高が進む。


◆服部誠:丸三証券専務取締役(エクイティ本部長)

①2万6000~2万9500円(適度な調整を挟みながら上昇)

②米利上げ停止と年内利下げ期待の持続と金融システム不安の鎮静化。日本固有の材料に着目した海外マネーの流入(資本効率改善に向けた変革期待、リオープンによる景況感の改善、賃上げを伴う適度なインフレ、設備投資の積極化など)。バリュー株の底上げと、半導体関連を軸としたグロース株の上昇。新NISAを前に個人投資家の存在感が高まること

③金融引き締めによる副作用の更なる顕在化。米国の景気減速や債務上限問題などを背景とした米株の大幅な調整。1ドル=125円を割り込むようなドル安・円高。2023年度の日本企業の業績見通しが想定を大幅に下回ること。


◆壁谷洋和:大和証券チーフグローバルストラテジスト

①2万6000~3万0000円(もみ合いからの上値模索)

②足元の相場は主に欧米要因で不安定な動きとなっているが、市場が落ち着きを取り戻した後には、いよいよ日本株の挽回が本格化する可能性がある。そもそも日本株はこれまで割安に位置付けられてきた中で、大幅な賃上げの実現や、東証によるPBR1倍割れ対策の強化など、いくつかの好材料が日本株市場に押し寄せてきていることが背景にある。また、22年度決算の発表を含む時期ながら、23年度業績に対する会社側の見通しが極端に悲観的なものにならなければ、日本株物色の条件は整うと考えられる。

③欧米の銀行不安がくすぶり、投資家のマインドが冷え込んだままだと、上値を追うのが難しくなる。さらに、FRBがインフレ沈静化のために利上げを継続し、年内の利下げ期待を完全に後退させるようなスタンスを示せば、米金利上昇とともにリスクオフのムードが強まりそう。決算発表時の会社側の慎重な業績見通しも、株価上昇に水を差す可能性がある。


◆伊井哲朗:コモンズ投信社長

①2万6500~2万8500円(6月にかけて上昇)

②インフレ沈静化を最優先させてきたFRBの姿勢が6月までに変化。PERの上昇が景気減速を反映した予想1株利益の下押し圧力を上回る形で株価が上昇するとみている。

③米シリコンバレー銀行の経営破綻を機にFRBが中堅金融機関の規制強化に乗り出せば、金融引き締めと同様の効果をもたらす。規制強化による引き締め効果がインフレ圧力に比べて強過ぎれば先行きの企業業績悪化に対する懸念を強め、株価の下落につながる。


◆大谷正之:証券ジャパン調査情報部部長

①2万6500~2万9000円(じり高、戻りを試す)

②23年度の業績について企業が控えめな予想を示しても、アナリストが保守的だと判断して強い見通しや投資評価を出せば、機関投資家も動く。

③22年度(23年3月期)の業績予想の下方修正が増えるなどして、市場心理が悪化すること。


◆小林真一郎:三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員

①2万6500~2万9000円(横ばい)

②米国利上げの打ち止めと海外経済の先行き不透明感の後退

③米国の追加利上げの可能性および海外経済の先行き懸念の高まり


◆野坂晃一:証券ジャパン調査情報部副部長

①2万6500~2万9000円(値幅の大きいボックス相場)

②欧米金融不安の後退、24年3月期の業績予想が保守的になり過ぎないこと、東証が力を入れるPBR底上げに向けた各企業による方針表明の3点。

③金融不安再燃や米国景気の先行き不透明感から売られる場面がありそうだが、これまで下値支持線として作用してきた36カ月移動平均線前後での下げ止まりが予想される。


◆藤代宏一:第一生命経済研究所主任エコノミスト

①2万6500~2万9500円(下振れ方向のリスクがある)

②半導体や周辺製品は在庫循環から見て環境が上向きになっている。自動車も供給制約が残る分、少し長い目で見れば挽回生産が期待できるかもしれない。

③金融引き締めの副作用として生じた金融システム不安が短期間で収まるとは考えられない。米国の金利は長短逆転状態になっており、銀行は利益を出しにくい。銀行貸し出しは積極化せず、企業の倒産は増えやすい。


◆北原奈緒美:内藤証券投資調査部シニア・アナリスト

①2万6600~2万9000円(6月にかけて上昇)

②企業価値向上を促す東証に呼応し、企業による資本効率改善に向けた動きが株価を刺激するだろう。膨大な内部留保を活用した増配や自社株買いが期待できることも株高の材料だ。24年のNISA拡充による新規資金流入も意識され、投資家心理にもプラスの影響を与えそうだ。

③3月期決算発表が本格化する4月下旬までは方向感が乏しそうだが、日経平均は2万6600円程度で下げ止まり、年初に続く今年2回目の買い場となるだろう。金融システム不安には引き続き留意が必要だが、米当局は預金保護などの対策を打ち出しており、信用収縮による株価急落には進展しないとみている。


◆三井郁男:アイザワ証券投資顧問部ファンドマネージャー

① 2万7000~2万9000円(5月まで上昇、2万8500円を目指し、6月はもみ合いで2万7500~2万8500円)

②国内景気は穏やかに回復し、賃金上昇も想定より広がり金融政策の修正時期が早まる。欧米の銀行システム不安が落ち着く。インフレ率が落ち着き、FRBの政策金利引き上げが5月で休止する。為替が1ドル=125~135円程度で安定する。会社の保守的な業績見通しに対し、投資家が上方修正余地を見込む。

③金融が逼迫(ひっぱく)し貸し渋りなど信用収縮が起きる。世界の景気が想定以上に落ち込み減益の懸念が高まる。円高が進み企業業績への影響が懸念される。年後半の増税議論が進む。地政学的なリスクが高まる。


◆安田光:SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト

①2万7000~2万9500円(↗)

②5月末に発表される会社ガイダンスが底堅く、FRBの政策転換、中国経済の回復が予想以上に強い

③中国経済の回復が想定よりも弱い

 

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