〔深読み米国株〕ソフトランディングは無理筋…では、有望銘柄は?
2023年03月24日 17時30分
3月21、22日の連邦公開市場委員会(FOMC)は金融システム不安を根拠とした利上げ見送り期待を一蹴し、政策金利の0.25%引き上げを決めた。インフレ沈静化という大目標のためには銀行経営をめぐる多少の混乱は甘受すべきだとのメッセージを市場に発した形で、米国株は当面は波乱含みの相場展開となりそうだ。
連邦準備制度理事会(FRB)は物価の安定と完全雇用をデュアル・マンデート(2つの大きな使命)としている。金融システム安定化が望ましいとしても、あくまでインフレ沈静化を妨げない範囲での話であり、FRBは3月FOMCの利上げ継続で筋を通した形だ。仮にFRBが利上げを見送っていれば、これまでの引き締め姿勢を覆すことになる。金融政策の予見可能性が低下すれば、結果として市場に無用なボラティリティーを与えかねない。急速な利上げによるシリコンバレー銀行などの破綻は、景気のハードランディング開始を予見させるが、FRBにとってはインフレ沈静化に必要なコストでしかないのかも知れない。
SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは23日付のリポートで、米国の過剰な消費を促したのは2020~2021年の財政拡張だったと指摘。過剰貯蓄を取り崩し、債務を拡大させてまで消費レベルを維持する米国家計の気質を踏まえてインフレ沈静化には景気減速が望ましいとして、「そもそもソフトランディングは難しかった」との見方を示している。次回FOMC(5月2、3日)でもインフレ沈静化路線が堅持されれば、債券利回りは景気後退の織り込みを進めて低下していく可能性が高そうだ。
金利低下が予想される局面では、投資家に多額の現金を還元する銘柄が魅力を増す。米国株の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は3月24日、「相場が荒れた時に選ぶ現金還元率の高い銘柄」と題する記事を掲載した。
株主への利益還元の指標では、配当と自社株買いの合計を純利益で割った総還元性向が一般的だが、株価が反映されていない指標のため、総還元性向でスクリーニングしても株価が割高な銘柄が紛れ込んでしまう。一方、現金還元率は配当と自社株買いを時価総額で割って求める。配当利回りに自社株買いを加え、株価と株主還元のバランスを見る総還元利回りというイメージだ。
同記事は現金還元率が10年物国債利回り(約3.5%)を大きく上回る銘柄を投資対象として検討するよう提案。生活必需品企業の魅力が乏しい一方、S&P500メディアセクターは今年の現金還元額が時価総額の約10%になるとの見通しを披露し、コムキャストによる高水準の利益還元を評価している。保険セクターでも有望な銘柄を紹介している。(編集委員・伊藤幸二)(了)