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〔深読み米国株〕ショック安が買い場提供か 悪影響の長期化懸念も

2023年03月17日 17時30分

AFP=時事AFP=時事

 スイス国立銀行(中央銀行)によるクレディ・スイス・グループへの流動性供与が16日に決まり、シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻前後から動揺が続いた株式市場は落ち着きを取り戻した。先物やオプションの投機的な取引を繰り返すCTA(商品投資顧問)など投資ファンドによるポジション整理は「ほぼ終わり、需給面での最悪期を通過した」(外資系証券)との指摘がある。一方、SVB破綻による悪影響の長期化も懸念されている。

 S&P500指数は6日高値4078.49から13日安値3808.86まで269.63ポイントも下落。その後、16日には半値戻しを超える3964.46まで上昇し、米国市場で多用される100日移動平均線を上回った。今後のS&P500について、株価の足取りは全値戻しコースを示唆しているようだ。

 米国株情報の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」はSVBを発端とする欧米金融不安を連日詳報し、銘柄選定につながる情報を提供している。

 16日付の「銀行株は買い場か、それとも崩壊か」では、大手銀行が中小銀行から離れた顧客を吸収していると指摘。多様な資金調達基盤を持つUSバンコープやモルガン・スタンレーに注目するアナリストの見解を紹介している。同日には「ハーレーは銀行株?買い場かも」とする記事で、大型オートバイで有名なハーレーダビッドソン株が地銀株ETFと連動するかのように下げたことを取り上げ、反発の可能性を指摘。15日付の記事「銀行破綻の影響を受けた4銘柄に買い推奨」でも、金融株の押し目買いを勧める現地アナリストの声を拾っている。

 一方、SVBショックは景気悪化を通じて株式市場を中長期的に圧迫する可能性があり、売り直しのリスクも意識される。

 象徴的なのは投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏による景気シナリオ変更だろう。スロック氏は米国の急速な利上げを受けて、景気がソフトランディングとハードランディングのどちらに向かうか議論されていた局面で、景気が減速しない「ノーランディング」を唱えた人物だ。

 バロンズ・ダイジェストは16日付記事「『ノーランディング』の生みの親、楽観的見通しを修正」で、スロック氏が顧客向けメモで、景気が「ノーランディングからハードランディングに移行している」としたことを紹介。UBSウェルス・マネジメントなど他社の見解とともに、米国で融資シェア30%を占める地方銀行の融資意欲低下や市場の混乱に懸念を示している。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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