欧州、財政協調で暗中模索=「戦後最大の試練」―新型コロナ
2020年04月26日 18時02分
【フランクフルト時事】新型コロナウイルスの流行を受け、欧州首脳は「戦後最大の試練に直面している」と口をそろえる。経済活動が停滞する中、欧州連合(EU)加盟国は家計や企業を支援する即効的な金融・財政政策の必要性を認識しているものの、特に財政の協調で足並みはそろわず、暗中模索が続いている。
欧州では3月以降の外出制限や店舗休業などの感染封じ込め策で景気が急速に悪化。国際通貨基金(IMF)は、今年のユーロ圏経済成長率を前年比マイナス7.5%と予測する。4月のドイツの企業景況感指数は過去最悪を記録。ドイツに比べ失業率が高く、死者数が2万人を超えるイタリアやスペイン、フランスでは状況は一層深刻だ。
欧州中央銀行(ECB)は、巨額の財政赤字を抱えるイタリアの国債利回りの急上昇(価格は急落)などを受け、3月以降に量的緩和を拡大。7500億ユーロ(約90兆円)の新たな資産購入計画を導入したほか、金融機関がECBから資金調達する際に差し入れる担保要件も緩和するなど、実体経済の悪化につながる金利上昇の回避に必死だ。
ただ、経済活動が制限される中では利下げによる景気刺激効果は乏しく、ECBの対応には限界がある。ラガルド総裁は「窮地に立つ企業や労働者を支援するには、野心的で協調的な財政政策が必要だ」と呼びかける。
フランスや南欧は「コロナ債」とも呼ばれる、債務を分担する共通債の発行を要求。マクロン仏大統領は17日付の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、感染拡大で疲弊したイタリアやスペインを支援するには共通債以外に「選択肢はない」と訴えた。しかし、ドイツやオランダなど財政規律の厳しい国の反対に遭い、実現は困難な情勢だ。
23日に行われたEU首脳会議では、感染収束後の経済対策として基金新設で一致したが、財源や規模など具体策はまとまらなかった。
欧米メディアによると、ラガルド総裁はEU首脳会議で、EUの対応は小規模で遅過ぎると強い懸念を表明した。ECBは30日に定例理事会を開き、これまでの政策効果を点検し、追加措置の必要性についても検討する見込みだ。これに対し、欧州各国はコロナ債を含め、財政面での協調をめぐる議論を続けるが、妥協案を見いだせるか不透明だ。(了)