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〔深読み米国株〕バフェットもカルパースも買い増し=アップル人気の真相は?

2023年02月16日 15時11分

AFP=時事AFP=時事

 米国最大の年金基金として知られるカリフォルニア州退職年金基金(カルパース)が2022年第4四半期(10~12月期)にアップル株の買い増しに動いたことがこのほど判明した。著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイもアップルを買い増している。アップルは昨年の値下がり率が27%と米国市場の悪役銘柄のひとつだった。多くの投資家にとって、カルパースやバフェット氏に追随していいものか悩ましいところだろう。

 アップルは時価総額が米国で最も大きい。2月15日終値ベースでは2兆4239億ドル(1ドル=130円換算で約315兆円)と2位のマイクロソフト(2兆0259億ドル)や3位のアマゾン・ドット・コム(1兆0216億ドル)を引き離し、世界の株式市場に大きな影響力を持つ。

 米国株情報の日本語媒体バロンズ・ダイジェストは2月14日早朝、「米最大の年金基金、アップルなど3銘柄を買い増し」とする記事を配信。カルパースがアップル、テスラ、ウォルト・ディズニーを買い増す一方、保有するウォルマート株の5分の1を売却したことが証券取引委員会に提出した書類で判明したと伝えた。カルパースはアップル株を800万株買い増し、残高は4300万株に増えた。

 一方、バークシャーはアップルを昨年7~9月期の8億9480万株から10~12月期には9億1580万株に増やしている。著名な大口投資家があえて昨年の暴落銘柄を拾うのは理由があるはずだ。

 世界的なインフレ沈静化は株式に資金を呼び戻すには格好の材料だ。米消費者物価指数の上昇率は昨年6月の前年同月比9.1%をピークに縮小し、市場参加者は利上げ停止や利下げ開始時期へ関心を寄せている。

 ただ、インフレ沈静化を買うだけであれば、アップルに的を絞る必要はない。単なる押し目買いというのも説得力に欠ける。

 市場でささやかれているのは「リベンジ買い」だ。時価総額の大きいアップルは加重平均型指数の構成比も大きく、ナスダック100指数の構成比は15日終値で12%を超える。昨年はS&P500指数が19%安と急落したが、アップルの27%安が響いた結果でもある。

 米国株市場が値戻しに向かうとすれば、アップルの保有高が少なければファンドの運用成績はNASDAQ指数やS&P500に負け、多ければ指数をアウトパフォームできる可能性が高い。「ITバブル崩壊局面の東京市場で当時、時価総額最大だったNTTドコモ株の組み入れを厚くするファンドが多かったのと似ている」(外資系証券)との指摘もある。

 ただ、昨年アップルで痛手を負ったファンドが株価指数に追い付き追い越すためにアップルを買うのは、ばくちの損をばくちで取り返すのとさほど変わらない。成長性や配当ではなく指数構成比の大きさを買うかのような取引は投資の常道から外れる。

 また、バフェット氏も最近は相場を見誤ることが珍しくないようだ。バロンズ・ダイジェストは2月16日に「『投資の神様』、神通力薄れる?」との記事を掲載。超長期投資家とされているバフェット氏が近年、保有銘柄の入れ替えを繰り返し、手放した銘柄の多くがその後上昇したことを取り上げている。一例では、バークシャーが昨年第3四半期に買ったTSMC(台湾積体電路製造)の大半を第4四半期に売却して損失を出した可能性があり、バークシャーが手放した後にTSMCが急伸したことを挙げ、「投資の神様」と持ち上げられてきたバフェット氏の迷走ぶりを指摘している。

 当たり前のことだが、投資の世界に神様はいない。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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