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〔深読み米国株〕住宅REITで目指す利回り10%…金利上昇も低下も歓迎の怪

2023年02月10日 15時50分

AFP=時事AFP=時事

 米国の不動産投資信託(REIT)は年初から上昇トレンドに乗っている。主役は住宅系銘柄だ。REITは金利上昇に弱いとの定説を覆し、直近の相場では金利が低下しても上昇しても買い材料と受け止められている。

 REITについて日本では、株式と債券のそれぞれに似た性質を併せ持つ商品だと説明される。値上がり益と分配金収入の両方を狙えるためだ。全米不動産投資信託協会(NAREIT)のホームページでも、REITのトータルリターン(値上がり益と分配金収入)はバリュー株と同様であり、低リスク債券より高い傾向があるとの記述がある。

 しかし現実のREITは株式より軽快に値上がりする場面もあれば、分配金収入の下支えを無視するかのように急落することも珍しくない。日々の値動きを観察する限り、REITは株式でも債券でもない全く別の商品であり、だからこそ分散投資の対象として好まれる。

 2月9日時点で米国REIT市場の代表的な指標FTSE NAREIT指数は昨年末水準を8.1%上回る。S&P500指数は昨年末比6.3%高、TOPIXは4.9%高なので、米国REITの軽快な値動きが際立つ。

 米国REITの快走は昨年の急落の反動による部分が大きい。NAREIT指数は2022年に27.5%安とS&P500の19.4%安よりも厳しい値崩れに見舞われたが、昨年10月の652.93を大底に反転し、今年2月2日には800の大台を回復した。

 相場上昇に大きく貢献したのは住宅銘柄だ。東証上場REITの投資先はオフィスと物流施設に偏っているが、米国でオフィス銘柄は脇役に近く、通信タワーなどのインフラや住宅などが主力セクターと位置付けられる。

 住宅銘柄には金利上昇が強い追い風となっている。米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は2月6日付の「不動産セクターが回復、検討すべきREIT5銘柄」と題する記事で、ローン金利の高騰が住宅購入を難しくしている一方、賃貸住宅の需要を押し上げている様子を取り上げ、8~10%のトータルリターンを狙えるとした。同記事は「家を買うか借りるかの選択で、これほど賃貸が人気になったことはない」とする現地のREIT運用専門家の言葉を紹介。経済の勢いが強く、新築住宅の供給が少ないエリアに注力するアバロンベイ・コミュニティーズとエクイティー・レジデンシャルなどの銘柄について分析している。ちなみに、これらの銘柄は「日本の投資家はほとんど保有していない」(外資系運用会社)とみられる。

 米国では、2月3日発表された1月の雇用統計で新規就業者の大幅増加が判明したため、利上げ停止や利下げ開始時期の後ずれが予想されている。市場金利が下がらなければ住宅ローン金利は高止まりし、住宅購入を断念した層が賃貸住宅に向かう構図は長期化する。賃貸住宅の需要が引き締まれば、住宅REITは賃料収入アップへの期待が値上がり要因となる。

 一方、市場金利が低下すれば分配金利回り面でのREITの優位性が増す。「そんなうまい話があるわけがない」と多くの投資家が思っているうちに、NAREIT指数はS&P500やTOPIXを上回って急伸した。(編集委員・伊藤幸二)(了)

 

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