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〔深読み米国株〕日銀会合が決める米国株の行方…伏兵は欧州債利回り

2023年01月13日 13時00分

EPA=時事EPA=時事

 S&P500指数は1月12日高値が昨年12月安値比6.2%高の3997.76と節目の4000に迫った。米国株市場は短中期投資家の含み損益改善が著しく、17、18日開催される日銀金融政策決定会合が「無風」で終われば、株価上昇の加速が予想される。一方、日銀による政策修正の方向が意識されると日本や欧州の債券利回り上昇を経て、昨年12月下旬からの米国株の立ち直りに急ブレーキがかかりかねない。

 S&P500など主要な米国株指数は昨年12月下旬を直近安値に反転。1月12日は米消費者物価指数(CPI、昨年12月分)の伸び率縮小が連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース減速期待を増幅し、株価を押し上げた。

 ただ、CPIの伸び率縮小と株価上昇を直結することには違和感がある。CPIは全体が6.5%、食料品とエネルギーを除いた「コア」部分が5.7%といずれも市場予想と一致し、サプライズはなかったが、株価は上昇した。野地慎SMBC日興証券チーフ為替・外債ストラテジストは13日付リポートで「サービス物価は相変わらず高いとみることができる」と指摘しているが、不都合な材料には株式市場が目をつぶった形だ。

 株高の背景として、投資家の含み損益改善が挙げられる。ナスダック100構成銘柄のうち74銘柄が25日移動平均線を、56銘柄が200日線をそれぞれ上回っている。25日と200日の各移動平均線をともに下回っている銘柄はアップル、テスラなど15銘柄にとどまる。多くの銘柄が直近25日などの株価平均を上回ることで、市場を先導する短中期投資家のリスク負担力が増している様子が浮かび上がる。足元の米国株式市場では、地合いの改善が株価上昇を呼ぶ好循環に入りつつあるようだ。

 もっとも、地合いの改善で上げてきた相場は市場環境の変化であっけなく暗転するリスクも抱えている。

 市場関係者が注視するのは日銀会合後の欧州債。日銀が昨年12月20日、10年物国債利回りの変動幅を0.25%から0.5%に拡大すると、日本国債だけでなく欧州債の利回りまで上昇した。フランス10年物国債の利回りは12月19日に2.6%台だったが、20日に2.8%台に上昇し、12月27日に3%の大台に乗せた。フランス国債は通常、日本関連の材料では動かないが、「日銀の金利上昇容認で日本の機関投資家マネーの本国回帰が始まり、欧州債の需給が緩むと現地では懸念された」(外資系証券)という。

 次回日銀会合について、12日付の読売新聞は大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検すると報じた。市場が大規模金融緩和の終了を意識し、日本や欧州の金利が上昇に向かうと、対円や対ユーロでドル安圧力が強まる。ドル安は米国輸入物価の膨張によるインフレ懸念を招き、株式には強いネガティブ材料になる。半面、日銀による政策修正への警戒感が杞憂に終われば、米国株は足元の好地合いに乗って回復トレンドを延長していきそうだ

 米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は12日に「S&P500、2023年に急反発の可能性」と題する記事を配信。年初からの株高を踏まえ、S&P500が25%以上値上がりする可能性を指摘する現地専門家の声を紹介している。(編集委員・伊藤幸二)(了)

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