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〔深読み米国株〕インカム商品が逆行高…早期利下げ、まだ「願望」の域

2023年01月06日 14時01分

EPA=時事EPA=時事

 2022年は下落基調を強める株式市場に逆行し、配当や分配金が魅力のインカム商品が値上がりした。市場には連邦準備制度理事会(FRB)による早期利下げ観測が広がっているが、利下げ開始が強力な反転材料になる成長株は低調な値動きが続き、早期利下げは「観測」ではなく「願望」の域を出ないようだ。

 22年はS&P500が19.4%安と急落した。インフレ沈静化を急ぐFRBによる連続大幅利上げと、急速な利上げ後の景気停滞懸念がマイナス材料だ。

 しかし、逆風に抗した商品もある。米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は23年元旦に「2023年のインカム投資対象ランキング」と題する記事を配信した。同記事は「インカム投資の見通しが過去10年間で現在ほど良かったことはまれだ」と指摘し、米国高配当株など12のインカム投資セクターの魅力度をランク付けした。

 1位はエネルギーパイプライン運営会社。パイプライン関連銘柄を束ねるアレリアンMLPETFは昨年、25%のリターンがあり、今年も注目される。個別銘柄では、米運用会社トータスエコフィンの専門家が天然ガス輸送大手ウィリアムズを推している。

 2位は米国配当株。日本の主要ネット証券も扱うバンガード米国高配当株式ETFは昨年の配当込みリターンはほぼ横ばいだった。同ETFはジョンソン&ジョンソン、エクソンモービル、JPモルガン・チェースなど配当狙いの定番とされる超大型銘柄の組み入れが多い。

 蛇足だが、高配当株志向は日本も同じ。昨年は東証配当フォーカス100指数が9.5%高と、東証株価指数(TOPIX)の5.1%安に圧勝した。

 最下位の12位は公益電力会社株。ディフェンシブ色は強いが目下、配当利回りやPER(株価収益率)などで割高だという。

 インカム商品が注目されるのはキャピタルゲイン(値上がり益)を期待しにくいことの裏返しでもある。22年は成長株が中心のNASDAQ100が33.0%安と急落した。株価を構成するPERと1株利益のうち、金利上昇がPERを大幅に押し下げ、投資理論の教科書通りの株価下落となった。

 市場では昨秋ごろから、FRBによる23年の利上げ停止と利下げ開始が語られるようになってきた。ただ、NASDAQ100は昨年12月に前月末比9.1%安と大幅に下落。今年1月5日は米民間サービス会社ADPが発表した昨年12月の全米雇用報告で労働需給の引き締まりが確認されると、NASDAQ100は昨年末の水準を約2%下回って取引を終えた。

 株価を観察する限り、利下げを織り込む様子はうかがえない。投資家がインフレ長期化と利上げ続行への警戒を緩めないうちは、インカム優位の相場シナリオが強い説得力を保つだろう。(編集委員・伊藤幸二)

 

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