〔深読み米国株〕インフレ沈静化に疑問符…米株急騰、主役は個人消費株
2022年11月11日 15時00分
10日の米国市場では、10月の消費者物価指数(CPI)の伸び率鈍化を受けて、インフレ沈静化と今後の利上げ幅縮小への期待から10年債利回りが急低下し、株価は急騰した。ただ、業種ごとに株式の騰落率を見ると一般消費財や不動産などの値上がりが著しく、株価はインフレ沈静化どころか旺盛な個人消費やインフレの長期化を織り込んでいるように映る。
米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は11日朝、「インフレ減速、FRB(連邦準備制度理事会)には良いニュース」と題する記事を掲載。10月のCPI上昇率が前年同月比7.7%と市場予想の8%を下回ったことについて、「FRBが利上げペースを緩める方向にあるとの見方を補強するものだ」との見方を示した。
一方、同記事は利上げ幅は縮小するが利上げ自体は続くとの見通しを強調。現地運用会社のストラテジストが「きょうのところは市場に楽しませておこう」と述べるなど、利上げ休止観測と距離を置く雰囲気があることを紹介している。
気になるのは米国株高の中身だ。
10日のダウ工業株30種平均は1201.43ドル高と急伸した。ダウの押し上げに最も大きく貢献したのはホームセンター大手のホームデポだった。値上がり率は8.7%とダウの3.7%を大幅に上回り、1銘柄でダウを164ドル押し上げた。
ホームデポのほかビザやアメリカン・エキスプレス、ナイキといった消費セクターのコア銘柄がダウの値上がりに貢献した。これら4銘柄でダウを350ドル近く押し上げた計算になる。
S&Pの業種別指数では、「一般消費財」の上昇率は7.70%とS&P500の5.54%を上回った。他業種ではインフレに強いとされる「不動産」が7.75%高と値上がり率が大きい。一般消費財や不動産株の急騰からは、FRBによるこれまでの連続大幅利上げでも腰折れしない個人消費や根強いインフレ観測が浮かび上がる。(編集委員・伊藤幸二)