米国株、サンタクロースラリーに暗雲…経済指標に「重要ポイント」あり
2022年10月28日 15時00分
米国株が急速に値を戻し、ダウ工業株30種平均は27日に3万2000ドルを回復した。世界的な利上げペース鈍化への期待が株価を押し上げる一方、先行きの景気や企業業績に対する不安は根強い。経験則から年末に向けて「サンタクロースラリー」が期待される一方、米経済指標の重要ポイント割れを機に株安リスクが再燃する恐れがある。
米ダウは今年最安値(2万8660.94ドル)を付けた10月13日からわずか10営業日後の27日に3万2388.42ドルまで13%高の急伸を見せた。下値不安後退の目安とされる底値比10%高をあっさりクリアした形だ。
米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は26日付で「株にも旬がある、今が買い時かも」と題する記事を掲載した。ウォール街でサンタクロースラリーと呼ばれる年末にかけての株高傾向があり、S&P500指数が過去95年間、第4四半期(10-12月)に平均2.7%上昇したことを紹介している。ただ、強気一辺倒ではなく、連邦準備制度理事会(FRB)の「タカ派」化が進んだり、景気減速を示すデータが出たりすれば、米国株の年末高習性は薄れるとしている。
では、数ある経済指標で何に注目すればいいのか。
SMBC日興証券の村木正雄シニアアナリスト・グローバル金融ストラテジストは11月1日発表のISM製造業景況指数が景気後退回避が可能な最低ライン割れに向かって低下していることに警鐘を鳴らしている。村木氏は27日付のリポート「グローバル金融ストラテジー」でISM指数の48.0を「Point of No Return(引き返せなくなる点)」と指摘し、足元の株式やクレジット市場は景気後退の織り込みが不十分だとの見方を示した。
村木氏によれば、過去にISM指数が48.0近くまで低下した際にNASDAQ総合指数のPER(株価収益率)が17~18倍に低下したが、今年10月26日時点では22倍と高止まりしている。過去にISM指数が48.0を下回ると同時に流動性危機が発生し、VIX(恐怖指数)が20~30前後のレンジを抜けて40を超え、金融市場が大混乱に見舞われた経緯があるという。
10月のISM指数は日本時間11月1日午後11時に発表される。8月は52.8、9月は50.9と低下し、10月の市場コンセンサスは50前後と「Point of No Return」の48.0に接近中だ。米ダウは7月14日から8月16日にかけて13.7%高と急伸し、その後は急落している。当時も利下げペース鈍化が株高材料だった。(編集委員・伊藤幸二)