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米国で自社株買い急減…逆風下で浮かび上がる「弱点」

2022年10月21日 15時30分

AFP=時事AFP=時事

 米国で上場企業の自社株買いペースが鈍っている。自社株買いは1株当たり利益や資産の上昇を通じて株価を押し上げる効果が強く、日本でも自社株買いを手放しで歓迎する雰囲気さえある。ただ、業績不安などで株価が下がり、投資家が救いの手を求める肝心の局面で買いが細る自社株買いの弱点が米国市場で露見した形だ。

 米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は20日朝、「メタと大手銀:自社株買いの代償」とする記事を掲載。米国株上昇の原動力となってきた自社株買いの勢いが最近、急激に鈍っていることを紹介している。

 メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)はここ1年で480億ドルを自社株買いに充て、1株当たり平均304ドルで買い戻した。しかし、業績低迷やネット上の仮想空間「メタバース」事業への懐疑的な見方とともに株価は下落基調をたどり、株価収益率(PER)は13倍台と2012年の上場以来の最低水準にある。S&P500の平均PERが16倍程度なので、メタは「成長株」と呼べないほど株価が下がっている。

 20日終値131.53ドルで計算すると損失(時価と買値の差)は272億ドル(約4兆円)を超えることになる。これまで多額のキャッシュを投じてきた自社株買いが株主の利益になったか疑わしい。しかも、購入ペースは急速に落ち、今年第2四半期は51億ドルにとどまった。

 一方、JPモルガンとウェルズ・ファーゴは昨年第3四半期に50億ドルを超える自社株買いを実施したが、今年の第3四半期は購入を見送り、シティ/グループも自社株買いを停止。バンク・オブ・アメリカは4億5000万ドルと、昨年同時期の100億ドル近くから急減した。金利上昇に伴う保有債券の値下がりや景気後退への懸念から、経営者は株主への利益還元より資本の温存に傾き、キャッシュ流出を抑えているようだ。

 利益還元策として自社株買いを重視すると、好業績でキャッシュが潤沢な局面で値上がりした株式を大量に買うことになりやすい。しかし、業績が悪化して株価が下がるにつれて買い出動は難しくなる。高値をつかみ、投資家が買いを入れてほしい底値で身動きが取れなくなるリスクが自社株買いに潜んでいることを米国株は示唆している。(編集委員・伊藤幸二)

 

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