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環境学から見た気候変動対応の課題…上智大・鈴木教授〔PR〕

2022年10月19日 18時00分

上智大学大学院 地球環境学研究科 鈴木政史 教授上智大学大学院 地球環境学研究科 鈴木政史 教授

 金融の力で持続可能な社会づくりを目指すサステナブルファイナンス。今後の見通しや課題を上智大学大学院地球環境学研究科で企業の気候変動対応や社会的便益と企業利益の両立について研究する鈴木政史教授に聞いた。

-教育・研究体制は?

 環境学は1つの学問分野に収まらないため、学部を持たない大学院大学として研究・教育活動を展開している。修士・博士課程で学ぶ約180人のうち7割ほどを留学生が占める。出身は中国や欧米、南太平洋の島国など多様だ。学生たちは日本企業の環境問題の取り組みに強い関心を持っている。

 日本では、これまで掲げてきた「低炭素」が「脱炭素」に変わるとともに、SDGs(持続可能な成長目標)が加わり、企業がクリアすべき目標が切り上がっている。気候変動対応が企業の経営戦略にどう影響するか、地域社会をどう変えていくかに関心がある。

 エナジージャスティス(Energy Justice)と呼ばれる考え方がある。直訳すると「エネルギーの正義」だ。脱炭素社会に向けて世界はエネルギーの大転換(Energy Transition)に向けて動きだしているが、一方で、転換のコストを賄えない等の理由で、この流れに取り残される人たちがいることを忘れてはならない。加えて、生態系への配慮も求められる。太陽光パネルを敷き詰めるのを急ぐだけでなく、生物多様性への悪影響を正しく評価することも重要だ。

-企業の環境対応を客観評価できるのか?

 「環境企業ランキング」など企業の気候変動対応をスコア化し、評価する試みを多く目にするようになった。気候変動対応に関する情報開示制度は整備途上であり、どの企業の施策が優れているかを厳密に定量化するのは難しい。気候変動対応が企業業績や株価変動といった経済的リターンにどの程度影響するか未知の部分もある。しかし、ランキング上位の企業と下位の企業では明確な差があり、一定の指標を基にランク付けすることは有用だと考えている。

【AFP=時事】【AFP=時事】


-脱炭素は進むのか?

 日本は温暖化ガスの排出量を2030年度までに2013年度比46%削減する目標を掲げている。リミットはあと8年だ。太陽光発電や風力発電によるエネルギーの「地産地消」も緒に就いてきたが、それだけでは目標を達成するのは難しいかも知れない。削減目標の実現性を高めるには、二酸化炭素の回収・貯留や太陽光パネルをリサイクルする技術や仕組みの確立などイノベーションが欠かせない。銀行によるグリーンボンド、サスティナビリティボンドの引き受けや前例がない案件であれば、ベンチャーファンドやエンジェル投資家といったリスクを取れる投資家の資金が必要になる。

-リスクマネー供給のほか必要なことは?

 若者世代を中心に消費者の意識が変わってきた。一例だが、大学にマイボトル持参で登校する学生が増えている。環境への配慮と節約の一石二鳥というわけだ。マイカーを保有するのではなく、複数人が必要な時だけ利用するカーシェアリングの普及も著しく、消費者はモノの消費や所有にこだわりを持たなくなってきた。当然、企業もビジネスモデルの転換を求められる。消費者や企業の気候変動対応をさらに後押しするため、厳しい規制や経済的インセンティブではなく、小さなきっかけを与えて人々の行動を変える「ナッジ」を環境問題にどう応用していくかも大きな課題だ。



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