日米株急騰に違和感=CPI上振れ、来週は売り直し?
2022年10月14日 15時30分
13日の米国市場では、9月の消費者物価指数(CPI)の上振れに抗して株価が急騰し、翌14日の東京市場でも株式が連れ高した。インフレ圧力の増大をものともしない株高に、市場関係者は違和感を隠しきれない様子だ。物価高騰とインフレ退治を急ぐ連邦準備制度理事会(FRB)による連続利上げ観測という構図自体に変化はなく、CPIの上振れを蒸し返して株式が売り直される場面がありそうだ。
米国株情報を日本語で伝える「バロンズ・ダイジェスト」は14日午前、「ひどいインフレなのに急騰、いったい何が起きた?」と題する記事を掲載。9月の米CPIの上昇率が前月比0.4%(市場予想0.1%)とインフレが加速する一方、ダウ工業株30種平均が2.8%高と大幅に上昇したことを取り上げ、米金融大手オアンダのシニア・マーケット・アナリストのエドワード・モヤ氏による「市場の反転には、頭をかきたくなる」との当惑の言葉を紹介している。
米国株の急速な値戻しの理由はいくつか考えられる。ひとつは企業業績への期待だ。13日はデルタ航空やドミノ・ピザが10~12月期の業績予想を上方修正しており、ドラッグストア大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは市場予想を上回る好決算だった。ただ、デルタ航空などの好決算を連邦準備制度理事会(FRB)による連続利上げでも個人消費が衰えない証拠だと考えれば、株価にとって好材料どころかFRBの「タカ派」続行を後押しする悪材料でさえある。
英国債の利回り低下が株高材料だった可能性もある。英10年物国債の利回りはトラス政権による減税案の完全撤退観測などから12日の4.6%台から13日には4.1%台に急低下した。「直近の世界的なリスクオフの元凶だった英国債相場が急反発(利回りは急低下)し、一斉にプット買いや空売りといったヘッジポジションが巻き戻され、米国や日本の株高を引き起こした」(外資系証券)との見方もある。ヘッジ解消に伴う一時的な需給変動による株高であれば、投資家の関心はFRBの金融引き締めに戻り、来週は「今週値上がりした銘柄から順に売り直される恐れがある」(同)という。
足元の株価が上昇したとはいえ、テクニカル指標の「売られすぎ」示唆や出来高急増などはなく、底値に到達した感触は乏しい。米S&P500指数は13日に3669.91(前日比2.6%高)と急伸したが、それでも前週の高値を3.6%下回っている。月足ではS&P500も日経平均も9、10月と2カ月連続で高値と安値がともに前月の水準を下回っている。直近高値を抜けない状態は売り抜けるチャンスが少ないことを意味し、投資家にとって最もストレスが掛かる。この状態が続けば、上値の重さ自体が悪材料として株価を押し下げかねない。
冒頭で紹介したバロンズ・ダイジェスト記事は「3%の上昇でさえ単なるノイズにすぎないこともある」と結んでいる。「FRBと戦うな」との米国の相場格言に従えば、まだ現金枠を温存しておく局面なのかも知れない。(編集委員・伊藤幸二)