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インフレ退治の敵は株式投資家…FRBに立ちはだかる「押し目買い」パワー

2022年10月07日 15時50分

AFP=時事AFP=時事

 9月の米雇用統計が日本時間7日夜に発表される。新規就業者数の上振れは市場が最も嫌う連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め強化につながるはずだ。しかし、米国株を売り急ぐ様子はうかがえず、持ち高を減らすどころか安値拾いの機会を待望する雰囲気が市場では強い。人為的に景気を冷やすことでインフレ沈静化を狙うFRBにとって、投資家の押し目買い意欲も難敵のようだ。

 米ダウは9月末に2万8715ドルの年初来安値を付けた後、急反転。10月6日までの3営業日は節目の3万ドル前後で推移しており、「米国では、ダウ3万ドル割れは買い場という雰囲気が強い」(外資系証券)という。国内でも「S&P500連動投信に関しては、米国株が急落すると個人の小口買いが集まり、損切りや投げ売りとは無縁だ」(インターネット証券)との声が聞かれる。

 米国株に対する強い買い意欲は米金融大手ステート・ストリートが毎月発表する投資家信頼感指数からもうかがえる。同指数は世界の機関投資家による株式保有高の変化を基に100を中立水準として算出し、リスク選好の指標とされる。

 9月の同指数は「グローバル」が108.8と3カ月連続で上昇。特に「北米」は109.0と昨年10月の114.0以来の高水準となった。今年2月にロシアがウクライナに侵攻し、3月にはFRBが0.25%利上げで金融引き締めに着手するなど株式への逆風は止まないが、機関投資家のリスク資産選好は強まるばかりだ。米国では今年3月末時点で個人金融資産の4割を株式が占めるため、株価が上がれば資産効果から個人消費を刺激し、インフレを増幅することになる。

 では、FRBの「タカ派」姿勢を無視するかのような株式投資への強い意欲はどこから来るのか。

 米国株情報媒体バロンズ・ダイジェストは2日で「一流の債券投資家による市場の嵐の乗り切り方」と題する記事で、大手運用会社ブラックロックで最高投資責任者を務めるリック・リーダー氏のインタビューを掲載した。リーダー氏は「債券市場は株式市場よりもはるかに早くマクロ環境に適応する」と指摘。金融引き締めの影響の株価への織り込みが進んでいない状態に警鐘を鳴らした。

 リーダー氏は「われわれの業界のほとんどの人は金融緩和政策の環境のみ経験し、問題があればいつでも中央銀行が介入してくれると期待している」と述べて、市場全体として本格的な金利上昇局面への経験が浅いことを不安視。「FRBは金融市場の味方ではない」と述べ、金融引き締めの渦中では押し目買いが通用しないと強調した。

 バロンズ・ダイジェストは2日、「FRBによる引き締めはこれから本格的に織り込まれる」と題する記事で、米国株の弱気相場継続を予想し、「潜在的な危機が地雷のように多く存在している」と株価が急落に見舞われるリスクを警告している。S&P500は2023年予想利益の15倍と長期平均に近い水準にとどまっており、2022年の1株利益が2021年(206.06ドル)に近ければ、3090(10月6日終値は3744.52)に下落する可能性があるという。(編集委員・伊藤幸二)

 

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