〔特派員リポート〕中国ハイテク各社に存続危機=米、半導体とソフトで技術封鎖攻勢
2020年07月13日 11時16分
米国が「半導体」と「ソフト」という、情報化社会を支える根幹技術で対中圧力を強めている。同盟国をも巻き込んだ米国の技術封鎖に、通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など近年、世界的に存在感を増した中国ハイテク各社は、事業継続すら危ぶまれている。
◇華為、事業継続困難に
米商務省は今年5月、華為に対する半導体などの禁輸措置の強化を発表。中国では「事業継続は困難になった」との見方が広がった。昨年5月に禁輸対象リストに追加された際は、米国外で生産された部材については、米国製品の利用比率が一定以下なら許可なしでの販売が認められた。今後は海外で生産された部材でも「米国製の製造装置や技術を使って生産・開発された」場合は、華為やその関連会社への販売が制限される。
規制強化は華為の子会社、海思半導体(ハイシリコン)を念頭に置いた措置とみられる。米国は当初、高性能半導体の供給を断ち、次世代通信規格「5G」などで世界的に影響力を増す華為の成長を抑える作戦だった。ただ、ハイシリコンの設計能力は既に世界最高水準に達しており、その生産を請け負う台湾積体電路製造(TSMC)などとの取引を阻止し、半導体調達を妨げる戦略に転じた。
ハイシリコンが設計した高性能半導体を製造できるのはTSMCや韓国サムスン電子など世界で数社に限られ、制裁が続けば華為は製品を出荷できなくなる。TSMCは既に華為からの受注を停止。サムスンには製造の受託を断られたもよう。中国は中芯国際(SMIC)など国産メーカーの育成を急ぐが、技術レベルは世界大手と2世代の開きがあるとされ、SMIC幹部によると、同社自身も米当局の制裁リスクに直面している。
◇ソフトも制裁対象
米国の技術封鎖は半導体と並び情報化社会を支えるソフトウエアにも及んでいる。今年6月には理工系の名門、ハルビン工業大学とハルビン工程大学で、米マスワークスの数値解析ソフト「MATLAB」の利用アカウントが無効化された。米商務省が、解放軍とつながりの深い両校を制裁対象リストに追加したのを受けた措置。両校は宇宙・航空、原子力といった国防・ハイテク技術の研究で重要な役割を果たしてきた。
MATLABはアルゴリズムやデータ解析など複雑な計算を可能にするソフト。数学や電子・通信、自動車・航空、エネルギー、金融、バイオなどさまざまな科学分野の研究に活用されている。行動認識や交通監視、人工知能(AI)など、幅広い産業でも利用され、制裁対象が広がれば自動運転や監視カメラシステムなど、関連産業が打撃を受ける恐れもある。
中国では今後、図面製作ソフトや熱流体解析ソフト、機構解析ソフトなども利用できなくなるとの懸念も浮上。米国の半導体技術やソフトは、あらゆる通信機器やシステムの土台として情報化社会を支えている。完全に切り離されれば全てをゼロから開発し直さなければならず、「想像を超える厳しい時代が訪れる」と不安の声も上がっている。(上海支局 佐藤雄希)
5G
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