グロースの次に売られるのは?…0.75%連続利上げ路線に疑問の声
2022年09月14日 14時20分
9月13日発表された8月の米消費者物価指数は前年同月比8.3%上昇した。市場予想(8.1%)を上回る物価上昇率は連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速への期待は吹き飛ばされ、同日はダウ工業株30種平均が1276ドル安と急落した。金利上昇に弱いITなどグロース(成長)株の下落が目立ったが、市場では他業種に売りが広がっていくことが懸念されている。
9月20、21日開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、3回連続となる0.75%の政策金利引き上げが確実視されている。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は今後の金融政策について「データ次第だ」と繰り返している。物価が異例の高止まりを続け、7月までの連続利上げの効果が確認できないうちは大幅利上げ路線を転換するつもりがないようだ。
ただ、市場ではFRBの「タカ派」一辺倒の姿勢に疑問も出ている。米運用大手インベスコのチーフ・グローバル・マーケット・ストラテジストのクリスティーナ・フーバー氏は0.75%の連続利上げについて「過剰となるリスクがある」との懸念を表明。FRBが認めるように、金融引き締めの悪影響が経済に表れるには時間がかかることを踏まえ、「0.25%ずつの利上げに戻るべき時かも知れない」と指摘している。
一方、米国株情報メディア「バロンズ・ダイジェスト」は14日早朝配信した「高インフレでグロース株急落、次はシクリカル株か」との記事で、次に売りのターゲットとなるのはシクリカル(景気循環)銘柄となる可能性があると警鐘を鳴らした。13日のダウ急落はインフレに対する反応の第一段階に過ぎず、これから景気減速を織り込んで、売りが他業種へ広がっていくとの予想だ。
一般に株価はEPS(1株当たり利益)とPER(株価収益率)の積に分解できる。「業績相場」ではEPSが増えることで株価が上がり、低金利による「金融相場」ではPERの上昇が株価を押し上げる。13日の株価急落は金利先高懸念の再燃によるPERの低下が主な原因で、今後は景気後退による1株利益の減少が株安を招くというのだ。
バロンズ記事では、景気後退に弱いシクリカル業種として工業、金属、鉱業、エネルギーを挙げ、「投資家はまだシクリカル気御油の収益低下を懸念していないようだ」と推察。インフレが次の段階、つまり景気が後退局面に入る前に「シクリカル銘柄の利益確保を検討すべきかもしれない」と結んでいる。(編集委員・伊藤幸二)