米国株「最悪の9月」へ…市場の関心はディフェンシブ銘柄に
2022年09月02日 14時40分
9月は米国株の値動きが低調なことで知られ、米国株情報の日本語メディア、バロンズ・ダイジェストが「最悪の9月」と表現するほど。投資家の目は嵐の中の待避先として、景気停滞の影響が小さいディフェンシブ銘柄に向かいつつある。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が8月26日の米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で積極的な利上げ路線を強調。同日の米ダウ工業株30種平均が1008ドル安と急落し、日経平均株価もパウエル議長講演前から9月1日にかけて1000円超の下落に見舞われた。
米国では、8月中旬にかけて株価が上昇する局面でも、株安に身構える雰囲気が強かった。バロンズ・ダイジェストは「『最悪の9月』、今年はひどいかも」(8月23日配信)とする記事で、投資顧問会社ナベリエ・アンド・アソシエーツの創設者ルイス・ナベリエ氏の「FRBと戦うな」との警告を紹介している。
9月2日配信の「『最悪の9月』を高品質銘柄で乗り切る」(9月2日配信)とする記事では、8月に相場が下がると9月は続落する傾向が強いことを1928年以降のダウ平均の値動きを踏まえて紹介。S&P500指数の50日移動平均線割れを受けて、株価がさらに下落するリスクを指摘している。
一方で同記事では、欧州系金融大手UBSのストラテジスト、キース・パーカー氏が堅調な売り上げ増加とUBSが2けたの株価上昇を予想する銘柄として、マイクロソフトや保険大手シグナなどを挙げている。景気後退リスクが高まると、高品質銘柄が優位性を発揮する傾向があるという。日本時間2日夜に米雇用統計(8月)が公表される前の記事だが、個別の経済統計に賭けるのではなく、市場で嵐が長引くのを前提とした発想だ。
日本でも株価下落リスクが強く意識されている。野村証券チーフ・エクイティ・ストラテジストの池田雄之輔氏は9月1日付リポート「日本株ストラテジー」で、「当面は需給と割高調整、その後は業績悪化」と3つの株安要因について考察し、株安が進むと予想している。世界景気の悪化に対して、日本株はディフェンシブ業種へのシフトや全体の業績見通しの下方修正が遅れているという。
東京市場では目下、ハイテクなど成長株の買い場を待つ雰囲気が強い。しかし、9月に米国株が下落基調をたどるでマイクロソフトやシグナが打たれ強さを発揮すれば、日本でも景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄が投資家の関心が集まりそうだ。(編集委員・伊藤幸二)