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FRB「中の人」は株安警告、市場は弱気卒業を先取り…バフェット氏は堅実な選択

2022年08月19日 13時00分

AFP=時事AFP=時事

 米連邦準備制度理事会(FRB)は8月18日、配当先物価格を基に株価の下落余地を指摘する専属エコノミストによるリポートを公表。一方、株式市場では弱気相場終了を予想するストラテジストらの声が増えている。FRBと株式市場の強弱感の対立を横目に、著名投資家のウォーレン・バフェットは元本の安全性が最高度にランクされ、利回り3%前後の財務省証券(TB)に資金を振り向けて、投資の機会をうかがっている。

◇FRBリポート「さらに下落する余地」

 FRBエコノミストが研究成果を披露する「FEDS Notes」に18日付で掲載されたのは「株価は景気後退リスクの中にあるか?配当先物からの根拠」と題するリポート。S&P500配当指数先物などから、市場が織り込む2023年にかけての成長予測を推計している。

 配当先物は将来の配当予想を数値化するもの。景気全体の動きや上場企業の業績見通しを消化して価格を形成する点は株価指数先物と同じだが、配当先物はより短期的な市場参加者の予想で価格が決まり、過去に支払われた配当総額とGDPの間は強い相関性が認められている。

 リポートによると、現在の株式市場が織り込んでいるのは配当とGDPの緩やかな下方修正だけ。一方、景気調査で定評のあるシンクタンクのコンセンサス・エコノミクスによる米GDP成長率予想(平均)は2022年が3.9%から2.1%に、23年が2.6%から1.8%と大幅に下方修正されている。エコノミスト予想通りの景気後退が現実化すれば、配当と株価がさらに下落する余地があるとリポートは指摘している。

◇「弱気相場に安らかな眠りを」

 株式市場はFRBの懸念と真っ向から対立する形で反騰トレンドに乗り、ナスダック総合指数は8月17日に4325まで上昇た。6月の最安値から2割近く高い水準まで戻し、数字の上では強気相場入りと言ってもいい。

 米国株情報を日本語で伝える「バロンズ・ダイジェスト」は8月14日に「弱気相場に安らかな眠りを。兆候は買い増しを指し示す」と題する記事を掲載。ルーソルド・グループ、ファンドストラットといった独立系投資リサーチ会社のストラテジストらによる弱気予想への反論を配信している。

◇バフェット氏TB買いの意味

 一方、バフェット氏は6月末までTBに投資している。その後も大規模な資産配分変更のニュースは見当たらず、TBの大量保有を継続中とみられる。17日付のバロンズ・ダイジェストは「超安全な財務省証券、バフェット氏に続け」とする記事で、バフェット氏がコマーシャルペーパー(無担保の約束手形)よりTBを好んでいるとし、同氏が率いる投資会社バークシャーの現金資産1050億ドルのうち750億ドルをTBが占めることを指摘。TBの購入方法やTBの代替となる上場型投信(ETF)を紹介している。

 TBは満期4週~1年で、3、6カ月債は毎週、1年債は4週ごとに米財務省が入札を実施する。8月18日の利回りは2.23(4週)~3.24(1年)%と7月の米消費者物価指数の伸び率(8.5%)には及ばないが、1年前の米10年物国債の1.3%などと比べればかなりの高水準だ。「今すぐではないが、最長でも1年以内に現金枠を消化する投資の好機が訪れる」。これがバフェット氏の見立てではないだろうか。(編集委員・伊藤幸二)

 

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