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米物価減速で日米株高は本物か…S&P500の3割安予想も

2022年08月12日 14時15分

◆米物価減速で日米株高は本物か…S&P500の3割安予想も

EPA=時事EPA=時事

 10日発表された7月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%(前月9.1%)と伸びが鈍化し、米国のインフレ沈静化を先取りする形で日米の株価が上昇した。賃金の伸びも減速すれば米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース鈍化の思惑が高まり、株価は一段高となりそうだ。一方、インフレが続き、米CPI発表後の株高がベア・マーケット・ラリー(弱気相場中の一時的な上昇)に終わるリスクも意識され、S&P500の3割安予想も出ている。

◆S&P500、3600から買い下がり

 「S&P500指数が3600になったら“かじる”、3300になったら“かみつく”、そして3000になったら“食べる”」。米国株情報の日本語メディア、バロンズ・ダイジェストは12日早朝、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)の投資家向けアドバイスを紹介した。S&P500指数の11日終値は4207.27なので、買い下がり価格帯下限まで3割近い暴落を想定していることになる。

 バンカメ分析チームによれば、米国株の過去3回の大底は家計による大幅売り越しの1、2四半期後に訪れ、底打ち時の業績予想は平均19%減益だった。しかし、コロナ禍のすべての四半期で家計による株式への資金流入が続き、業績予想は7%のプラスを維持している。過去の底打ち局面のような総悲観とはほど遠い相場環境にあるというわけだ。金融引き締めを急いできたFRBの政策転換は、非農業部門の雇用者数の伸びが10万人を下回り、原油価格が1バレル=80ドルを割り込み、長短金利の逆転を解消するなどが条件という。

◆雇用ミスマッチでインフレ継続も

 SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは12日付のリポートで、雇用のミスマッチでインフレが継続するリスクに警鐘を鳴らした。米国の求人は約1000万人と高水準にある一方、失業者は500万人もいて、企業は求める人材を確保できていない様子が浮かび上がる。企業がほしい人材を集めるために従来より高い賃金を提示すれば、失業率とインフレ率の相反性を示すフィリップス曲線が上方にシフトし、現在の失業率から予想されるインフレ率はさらに高くなる可能性があるという。

 牧野氏によれば、市場は1年後のコアインフレ率を2.8%程度と予想している。1年で足元の5.9%の半分程度に落ち着くという楽観的なものだ。しかし、賃金上昇が進み、インフレ率が失業率の割に高い水準に押し上げられれば、市場が期待する水準にインフレ率が低下するためのハードルは上がることになる。

◆「質の高い銘柄」に乗り換え

 バンカメは先安リスクのある局面での投資姿勢について、持ち株を少し売って現金を増やす、強力なフリーキャッシュフロー(純現金収支)を持ち、配当のある質の高い銘柄に乗り換えることをアドバイスしている。(編集委員・伊藤幸二)

 

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