米小売株、景気後退を7割織り込み…金利先物の将来像とズレ
2022年06月09日 14時30分
金融市場はしばしば先行きの景気や企業業績を見誤る。特に株式と金利が異なる将来像を描く局面は要注意だ。米国では現在、個人消費の動向に敏感な小売株が7割程度の確率で景気後退を織り込む一方、短期金利先物は6、7月の連続利上げでも消費や物価上昇にブレーキが掛からず、9月以降も急ピッチで金融引き締めが続くことを前提とする価格だ。株式か短期金利先物のどちらかが間違った価格で取引されていることになり、両者のずれが拡大するほど将来の波乱は大きくなる。
◇小売り6銘柄は有望
米国株の投資情報を日本語で伝える「バロンズ・ダイジェスト」は9日、「景気後退を乗り切る小売り6銘柄」と題する記事を配信。家庭用家具販売のリストレーション・ハードウエア・ホールディングスなど景気後退期でも有望な6銘柄を取り上げている。
記事はウェルス・ファーゴのアナリスト、ザッカー・ファデム氏の分析を紹介。株価収益率(PER)をはじめとするバリュエーション指標と1株当たり利益の減少率を基に試算したところ、景気後退の可能性の織り込み度合いは家電や日用雑貨を販売する小売り各社で51%、消費者の裁量に任された一般消費財を販売する各社で約70%に上ったという。
米国では、小売り大手ターゲットが6月7日、過去3週間で2回目の業績予想引き下げを発表。ウォルマートの投資家説明会では、在庫水準の高止まりが指摘された。小売業界全体の先行きに暗雲が垂れ込めているだけでなく、個人消費が国内総生産(GDP)の多くを占める米国景気全体の変調が懸念されている。
◇FF先物は4回連続0.5%利上げ織り込み
一方、6月14、15日と7月26、27日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がこれまで何度も強調した通り、FRBが誘導目標とするFF(フェデラル・ファンド)金利先物は0.5%の連続利上げを完全に織り込んでいる。
市場参加者の関心は政策当局からのヒントに乏しい9月会合(20、21日)だ。FRBが9月も0.5%利上げを実施し、FF金利が2.25~2.50%(現在0.75~1.00%)に上昇する確率は64.4%、0.75%利上げと合わせると76.2%の高率になる。FF金利先物は5月会合から4回連続の大幅の利上げを予想している。足元で進む1ドル=134円を超える円安・ドル高も、こうした連続引き締め観測が底流にある。
ただ、米国の小売株が「警告」するように、景気の後退期入りが明確になってくれば、FF金利先物は方向転換を迫られ、先行きの金利上昇を前提としてきたドル全面高の流れも反転する可能性がある。