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英首相:EUとのFTA交渉、決裂辞さず=独首相と電話会談

2020年07月08日 16時38分

AFP時事
AFP時事

 【ロンドン時事】1月末に欧州連合(EU)を離脱した英国のジョンソン首相は7日、EU主要国ドイツのメルケル首相と電話会談を行い、難航している英EUの自由貿易協定(FTA)などをめぐって意見交換した。ジョンソン氏は「早期の合意に向けて努力する」と述べる一方で、交渉決裂も辞さない強硬姿勢を堅持した。

 英首相官邸報道官によると、ジョンソン氏は「妥結が可能でなければ、オーストラリアの条件で『移行期間』を終える用意がある」とメルケル氏に伝えた。豪州はEUとFTAを締結しておらず、「豪州の条件」とは、豪州と同様にFTAなしで対EU貿易を行うことを指している。

 英国のEU離脱に伴う社会・経済の混乱を回避するために導入された「移行期間」は、年末に期限を迎える。その時点で英国はEUの関税同盟と単一市場から脱退し、「完全離脱」を果たす。同時に英EU間の自由貿易にも終止符が打たれ、さまざまな通関手続きが復活する。FTAにはこのギャップを埋める働きがあるが、交渉がまとまらなければ、物流などに混乱が生じる恐れがある。

 英EUは、英沖合でのEU加盟国の漁業権や、双方の企業が公平な条件で競争を行うための規制環境の確保などをめぐって対立。FTA交渉は暗礁に乗り上げている。

 バルニエEU首席交渉官は先月下旬にテレビ会議形式で開かれた英上院の公聴会に出席し、漁業問題に関して英側に譲歩案を提示したと証言。しかし、今月2日の声明では「深刻な相違が残っている」と語り、英側から譲歩案に対して前向きな返答がないことを示唆した。

 EUは欧州委員会が全加盟国を代表して交渉に当たる仕組みで、加盟各国には英国と単独で交渉を行う権限がない。ただ、欧州委は仮に英国との合意案をまとめることができても、最終的に加盟各国および欧州議会の承認が必要になるため、バルニエ氏は交渉の過程で定期的に双方に詳細を説明し、異論がないかチェックしている。

 EUは英国にとって最大の貿易相手で、英国の全貿易の半分がEUとの取引。このため英企業はEUとのFTAを政府に懇願しているが、EU離脱は経済合理性を度外視した政治運動で、ジョンソン氏らはあまり聞く耳を持っていない。

 一方、EUにとって英国との取引が全貿易に占める割合は、わずか5%程度。アイルランドやベルギー、フランスなど英国とのつながりが深い近隣国は対英FTAに熱心だが、EU全体としては「どんな犠牲を払ってでも英国との貿易協定をまとめる必要がある」という機運は広がっていない。(了)

 

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