黒田日銀総裁:金融緩和縮小、適当でない=「政府の子会社」否定―内情で講演
2022年05月13日 16時27分
日銀の黒田東彦総裁は13日、内外情勢調査会で講演し、「現在の金融緩和を縮小することが適当とは考えていない」と述べ、欧米と同様に金融引き締めに転じるとの見方を否定した。長期金利を0%程度に誘導し、上下0.25%までの変動を認める枠組みに関しても当面、継続する考えを明らかにした。
黒田総裁は講演後の質疑応答で、将来の利下げの可能性を示している現在の政策金利の先行き指針についても「維持することが適当だ」と強調した。
また、自民党の安倍晋三元首相が9日、「日銀は政府の子会社だ」などと発言したことをめぐっては、金融政策や業務運営は日銀法により自主性が認められていると指摘。その上で「日銀は政府が経営を支配している法人ではない」と否定した。
黒田総裁は講演で、国内経済について「新型コロナウイルス感染症による大きな落ち込みからの回復プロセスにある」と説明した。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻もあり「当面は下振れリスクが大きい」との見解を示した。
一方、上昇傾向が顕著な消費者物価に関しては「目先、2%程度まで上昇率が高まるが、エネルギー(価格の高騰が)主導であり、持続力を欠く」と分析。2%を超える高い伸び率は一時的と見込んだ。
このため、現在の経済情勢を踏まえると「強力な金融緩和により、感染症の影響からの景気回復を支えることが必要だ」と強調した。
◇黒田総裁発言のポイント
▽(現在の経済・物価情勢下で)金融政策の役割は、緩和的な金融環境の提供を通じて総需要の回復をしっかりとサポートすることだ。現在の金融緩和を縮小することが適当とは考えていない。
▽長期金利を0%程度とする現在の金融市場調節方針を維持することが適切。市場機能維持の観点から、長期金利が上下0.25%のレンジ内で推移するよう必要額の国債を買い入れる。
▽当面感染症の影響を注視し、企業の資金繰り支援と金融市場の安定に努めるとともに、政策金利の先行き指針も、これまでの緩和バイアスを維持することが適当だ。
▽日銀は政府から過半の出資を受けているが、出資者に議決権は付与されていない。金融政策や業務運営において日銀法により自主性が認められており、政府が経営支配している法人ではない。
(了)