NFTビジネス、権利者にも配慮した仕組み作りを=JCBI部会
2022年04月26日 13時05分
NFT(非代替性トークン)関連ビジネスが国内外で広がりを見せている。日本の民間企業で構成する「ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)」の著作権流通部会は、「NFTの本格普及には、NFT事業者や消費者だけでなく、コンテンツの権利者にも配慮した仕組み作りが不可欠」と指摘し、政府への働きかけやNFT利用者への啓蒙(けいもう)活動を続けることの重要性を唱える。部会長で骨董通り法律事務所の岡本健太郎弁護士と副部会長でメルカリ<4385>の永井幸輔弁護士、同じく副部会長で早稲田リーガルコモンズ法律事務所の稲村宥人弁護士がインタビューに応じた。主なやりとりは以下の通り。
―JCBIは何を目指す団体か。
デジタル時代におけるコンテンツの流通促進を目標としている。知的財産を持つメディアやコンテンツ関連企業が2020年2月に立ち上げた。現在、会員は広告代理店やエンターテインメント、保険など大手企業を中心に26社。業界横断でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。
DX戦略の一つとして、NFTに注目している。単なる投機の対象ではなく、各社が保有するコンテンツが利活用されることを期待している。
―NFTビジネスをめぐる動きが活発だ。
ブロックチェーン(分散型台帳)の技術を利用し、アート作品などとして取引されるNFTには、売買にとどまらず、クリエイターへの支援やファンコミュニティーの創造、アート振興、地方創生、メタバース(仮想空間)など、さまざまな可能性がある。
3月には自民党のデジタル社会推進本部「NFT政策検討プロジェクトチーム」が、取り組むべき重点施策を「ホワイトペーパー」として取りまとめ、国家戦略を策定するよう提言した。
―JCBIは自民党へどのような要請を。
NFTについて、JCBIは自民党などと情報交換を重ねてきた。ホワイトペーパーの公表に先立ち、意見書を提出した。この意見書は、ここまでの一連のやりとりを改めてまとめたものだ。ホワイトペーパーには、われわれの指摘した課題がほぼ網羅されている。
―提出した意見書の具体的内容は。
会員企業へのヒアリングを基にNFTの抱える課題を整理し、その解決を要望した。現状はまだ、コンテンツの保有者にとって、安心感があるものになっていない。
例えば、権利侵害の問題がある。コンテンツの正当な権利者でない人がNFTを無断で発行すれば、消費者は贋作(がんさく)をつかまされ、損失を被る。コンテンツの価値が毀損(きそん)することにもつながる。消費者がNFTの仕組みを十分理解せずに購入している面もあり、啓蒙が重要だ。
―コンテンツの権利者に配慮を求めている。
NFT関連ビジネスの発展にはコンテンツが不可欠。権利者の意見を積極的に取り入れ、安心して取引できる仕組みの構築に向け、十分検討していく必要がある。
現在は、海外市場との競争の観点から、ブロックチェーン技術を利用した事業展開や金融的な側面に軸足を置いた議論が中心になっていると感じる。
―法規制の在り方について。
黎明(れいめい)期は、NFT関連ビジネスや技術革新を阻害しないルール作りを模索すべきだろう。日本だけが過度な規制をかければ、国際競争力の低下を招く恐れがある。関連事業者や業界団体が連携し、自主規制や啓蒙活動に取り組むのが望ましいと考える。新しい技術を利用して課題の解決を探る方法もあり得る。当局の協力もいただきたい。
―税制がNFT普及の障壁との指摘もある。
ブロックチェーンの技術を使った経済活動に対応する税制を構築することが、NFT関連ビジネスにとって重要なのは確か。意見書に盛り込んだ課題については、スピーディーな解決を目指し、関係省庁と意見交換を続け、ルールを策定していきたい。(了)