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「事業性評価」セミナー盛況…金融庁銀行第二課長の本音は?

2022年03月03日 10時30分

質問に答える新発田課長(右)質問に答える新発田課長(右)

 金融庁の新発田龍史銀行第二課長は2月22日、オンラインセミナーで講演した。セミナーには地方銀行や信用金庫、信用組合、農業協同組合などの関係者約380名が参加、「事業性評価」や規制緩和による金融機関の業務拡大についての考え方について語りかけ、視聴者からの質問にも応じた。

 事業性評価は金融庁が掲げる重点施策の1つ。担保や保証に過度に依存せず、企業の将来性を見極めて融資するよう金融機関に促すものだ。金融機関が企業の経営改善や生産性向上を後押しして経済の活性化や金融機関のビジネス基盤強化につなげる狙いがある。

 金融業界の一部では最近、金融庁は事業性評価に関心を失ったのではないかと見方がある。「金融行政方針」の中でも事業性評価という単語の出現頻度が低下しているようだ。

 これに対し、新発田氏は良し悪しは別として、と前置きして「上書きしない限り、一度言ったことは生きていると思うくせが私たちにはある」と話し、事業性評価の重要性を確認した。

 その上で、銀行から事業性評価シートの作成に協力したものの、その後は「放置」状態だったと苦言を呈した企業経営者の例を紹介。「事業性評価は目的ではなく、経営者と同じ目線に立つための手段だ」と述べ、事業性評価の本質が「企業のことをどれだけきちんと把握するか」にあることを強調。金融庁が求める事業性評価を当てにいくのではなく、個々の金融機関が考えていることを「自信をもってやってほしい」とエールを送った。

 金融機関の業務拡大については健全性維持や利益相反の有無が問題になる。新発田氏は銀行が100万円の資本金で鮮魚店を経営するケースを例に出し、「魚屋さんは銀行にとって全くの他業だが、それで銀行の健全性が傷つくことは全然ない」と指摘し、金融機関の独自の取り組みを尊重する姿勢を確認した。そのうえで「スピード感や検討の手間もコストだと考えると行政のやり方はどんどん変えていかなければいけない」と、金融機関の新規事業をチェックする金融庁のスピードアップにも意欲を示した。

 講演の後半は時事通信社の清水泰至経済部長との対談となった。

 清水部長は「個々の金融機関が自由にやっていく」という流れに理解を示す一方、過去に「金融処分庁」と言われたことを引き合いに出し、「裏でガイドラインがあるのではないかという疑心暗鬼がぬぐい切れていないのではないか」と率直な疑問をぶつけた。新発田氏は金融庁に対して金融機関が抱く警戒感について「都市伝説的なものをどうやって解きほぐしていくのかというのがカギかなと思っている」と述べた。そのうえで「監督する側とされる側で利害が対立するわけではない」として、顧客のための金融機関を目指す方向性は官民で一致していることを確認した。

 視聴者からは新発田氏が講演前半で取り上げた銀行による鮮魚店の経営について、「取り組み可能なことを限定列挙する銀行法を、不可能なことを列挙し、それ以外は自由とする考え方もあると思う」と問題提起された。これに対し新発田氏は「まさしくおっしゃる通りだと思う」と応じ、銀行の健全性に影響を与えない範囲ではあるが黒字化の時期を尋ねるなど「銀行監督のノリ」とは決別して「何をやるかについて、もうとやかく言わない」と新ビジネスを後押しする立場を確認。地域活性化事業会社については今後、「ぎょっとするような実例も出てくる」と、金融機関の創意工夫に満ちた新規事業に期待を示した。

 

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