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企業業績改善に期待 =「9月末までに3万円」最多-時事・株価フォーキャスト

2021年07月01日 14時00分

 

 時事通信は6月下旬、市場関係者を対象に、今後3カ月間の日経平均株価の見通しに関するアンケート調査を行い、23人から回答を得た。

 9月末までの日経平均の予想レンジの上限については「3万0500円」と「3万2000円」とする回答が多く、3万円回復の予想が大半を占めた。レンジ上限が実現する条件として、4~6月期決算後の企業業績改善期待を挙げる意見が14人で最多。また、新型コロナウイルスワクチンの接種進展や変異ウイルスの拡大抑制、米長期金利の安定を挙げる意見も多い。

 一方、予想レンジの下限は「2万7000円」から「2万8500円」までにほぼ集中。レンジ下限が実現する条件として、米国のテーパリング(量的緩和縮小)や利上げの前倒し観測の広がり、米長期金利上昇など、米金融政策をめぐる動きを挙げる意見が19人と回答者の大半を占める。新型コロナウイルスの感染再拡大、菅政権の支持率低迷による政局流動化、米国と中国の対立激化なども警戒されている。(了)

◇日経平均の予想レンジと上限・下限条件

 市場関係者へのアンケート結果は以下の通り。①は7~9月の3カ月間の予想レンジ、②は上限実現の条件、③は下限実現の条件。



◆市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト

①2万8200~3万4300円

②主要国で新型コロナウイルスワクチンの接種と経済活動の正常化が順調に進展する。米国で高い物価の伸びが一時的にとどまり、労働市場の緩やかな改善が続くなか、金融政策の正常化が市場の波乱なく進む。

③主要国でコロナの感染拡大に収束が見られず、経済活動の正常化が大幅に遅れる。米国で高い物価の伸びが続き、強めの経済指標が目立つ中、金融政策の早期正常化への警戒感が強まる。



◆新井洋子・三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ・グローバル投資ストラテジスト

①2万3500~3万4000円

②世界経済の安定的な拡大やドル円相場の円安基調が続くなど企業業績が想定以上に拡大し、最高益を大幅に更新する。事業構造改革の効果が顕在化し日本企業全体の予想ROEが10%以上となる場合、バリュエーションが一段と切り上がる。東証の市場改革で外国人投資家の日本株に対する評価が変わる。超過貯蓄が抑えられていたサービス消費を大幅に拡大させ、コスト削減効果とともに内需企業の業績が急回復し、株式価値が再評価される。

③新型ウイルス変異株による第5波の到来。集団免疫の獲得が後ずれし、最初の緊急事態宣言以上に経済を停滞させ、内需企業を中心に業績回復が来期以降にずれこむ。また、そうした状況を受け政府の支持率が低下し政治リスクが顕在化する。国際商品市況の高騰などによる世界的なインフレ高進が企業の利益率低下につながり、業績見通しが大きく引き下がる。金融引き締めなどで、中国や米国の景況感が鈍化していく。



◆益嶋裕・マネックス証券マーケット・アナリスト

①2万7000~3万3000円

②ワクチン接種が順調に進み、新規感染者数が減少傾向となる。米国で早期引き締めの議論が強まらない。

③ワクチン接種の遅れや変異株によるワクチン効果の減少などで新規感染者数が増加傾向となる。米国で早期引き締めの議論が強まる。



◆小髙貴久・野村証券シニア・ストラテジスト

①2万6500~3万2500円

②日米4~6月期決算発表を受けて、企業業績の加速が確認される。日本でもワクチン接種の進展により、対面ビジネスが活発化する。米国インフレ指標の伸びが鈍化し、インフレが一時的との信頼感が強まり、期待インフレ率の低下などから金利上昇リスクが後退する。

③米国インフレリスクが止まらず、期待インフレ率や長期金利の上昇による世界的な株価調整の発生。テーパリングや利上げの前倒し程度であれば一時的な調整にとどまるので、ここで想定する下限に落ちるほどのリスクではない。



◆大谷正之・証券ジャパン調査情報部部長

①2万8000~3万2000円

②4~6月期の決算発表で期待以上の収益拡大や業績予想の増額修正が出てくる。2月以降、2万9500円を挟んだもみ合いが長く続いていたため、同水準を抜ければ、それなりのエネルギーを伴って動きが出る。米国の早期引き締めに対する警戒感が和らぎ、適温相場継続への期待から米株が上昇すれば、日本株にもプラスとなる。

③米中の対立激化、新型コロナの感染再拡大、金融政策をめぐる政策側と市場との温度差など。



◆押久保直也・三井住友トラスト・アセットマネジメントシニアエコノミスト

①2万8000~3万2000円

②日本での想定以上に速いワクチンの普及、外出自粛に伴う支出抑制で増加した貯蓄の取り崩し(リベンジ消費の盛り上がり)、東京オリンピックの予想外の大成功、予想以上に大規模な米インフラ政策の成立。

③日本でのワクチン接種状況の遅れやオリンピック後の新型コロナ変異株の感染拡大を背景に緊急事態宣言に再度追い込まれる。米利上げ前倒し観測の更なる高まりに伴う米金利の急上昇。米中摩擦の激化。



◆福田理弘・フィデリティ投信インベストメントディレクター

①2万7000~3万2000円

②ワクチン接種の進展と経済活動の回復を背景に企業業績が順調に拡大する一方で、米金利上昇は適度な水準にて収まる。

③市場が何らかの要因を契機に米国の金融引き締め策を織り込みに行き、リスクオフの動きが広がる。ただし一時的な混乱にとどまる。



◆壁谷洋和・大和証券チーフグローバルストラテジスト

①2万7000~3万2000円

②ワクチン接種に後れを取った日本が、接種の加速で欧米市場が経験する経済再開相場に行き着くシナリオの下で実現。日本株(TOPIX)の12カ月先予想PERは、年初から2ポイントほど低下し、直近で16倍を割り込む状況。他市場との比較で、日本株が割り負けている印象で、先行する欧米市場の後を追う展開となれば、予想PERの底打ち・反転とともに、年初来の高値水準が見えてくると考えられる。ワクチン格差によって生じた株価パフォーマンスの格差は、時間さえかければ埋め合わせ可能な問題である。

③米国の金融政策を巡る混乱で、不透明感が強まり、再び2万7000円台までの調整が起こり得るとみる。本来であれば、テーパリング開始の議論がマーケットの材料として中心となるべきだが、それを飛び越えて、利上げ開始の議論にまで飛躍することになれば、6月のFOMC後に見られたような市場の動揺が一時的にでも生じる可能性はある。また言うまでもなく、変異株の広がりによる新型コロナの感染再拡大も株価下振れのリスクとなる。



◆香川睦・楽天証券チーフグローバルストラテジスト

①2万7000~3万2000円

②米長期金利が安定する中、米国株が上下しつつも堅調トレンドと「リスク選好姿勢」が続く。ワクチン接種普及が進む、東京五輪開催、解散総選挙(9月)で与党勝利。国内の先行き景況感が改善し、外需系製造業に加え内需系サービスの業績回復期待が強まる。

③米国で金融政策変更観測が高まり長期金利が再上昇。米株安で「リスク回避姿勢」が強まる。変異株(デルタ型)の影響で国内の感染動向が収まらず、ワクチン接種の普及も遅れ続ける。国内景気の停滞感が長期化し、内需系企業を中心に業績回復の後ずれ懸念が強まる。



◆向吉善秀・三菱UFJ国際投信シニアエコノミスト

①2万5000~3万2000円

②国内で新型コロナワクチンの接種が進展(1回以上の接種率が欧米並みに5割超達成)と新型コロナ感染の収束。東京五輪が無事終了し内閣支持率が上昇、8月末に30兆円規模の大型経済対策が策定。世界的に新型コロナ変異株の感染拡大が抑制、米国の量的金融緩和策の縮小は緩やかに実施(8月のジャクソンホール会合で明示)。

③予想以上の物価上昇を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ予想を一段と前倒し、米長期金利が大幅に上昇。長期金利上昇で米住宅市場が悪化するなど、米国経済が減速。資本流出により新興国経済が悪化。



◆服部誠・丸三証券専務

①2万7500~3万1500円

②パウエルFRB議長が繰り返している『インフレ高進は一時的』であることが確認され、金利上昇が緩やかなものにとどまる。米株市場の堅調さが持続する。9月末に向けて国内のワクチン接種率が、足元の欧米並み(40~50%)となり、かつオリンピックを挟んでコロナ変異株がまん延しない。円安のさらなる進行など、企業業績の上振れ期待が高まる。秋の衆院選に向けて自民党圧勝ムードが醸成されている。これらを背景に海外投資家の日本株買いが本格化する。

③米インフレ率が想定外に高止まりし、金融引き締めの時期がさらに前倒しになるとの警戒感が高まる。それに伴い米株市場が大幅な値幅調整入りする。コロナ変異株のまん延。



◆山本信一・岡三証券シニアストラテジスト

①2万7500~3万1000円

②ワクチン接種進展と国内感染者収束。衆院選自民党勝利と経済対策期待。

③国内感染者再拡大。米雇用急回復によるテーパータントラム。



◆馬渕治好・ブーケ・ド・フルーレット代表

①2万8500~3万0500円

②企業収益が持ち直す。4~6月期の決算での企業による業績予想の修正は少ないかもしれないが、アナリスト予想については上方修正が広がる可能性がある。

③新型コロナウイルスの感染が収まらず、再度緊急事態が宣言される、あるいは東京五輪により感染が広がるといった状況に至ると、海外投資家を中心に、解散・総選挙による自民敗北の可能性など政治的な不透明感が意識されるかもしれない。FRBの動向も下振れリスク要因。例えばテーパリング開始時期について何か示唆し、市場が一時的に不安定になることはあり得る。



◆藤代宏一・第一生命経済研究所主任エコノミスト

①2万8000~3万0500円

②4~6月期の決算でも、引き続き製造業中心に業績改善が期待できる。

③改善は製造業に集中しており、内需は明らかに弱い。今後も内需の回復力の弱さが続くことは株価下押しの要因になる。中国経済のスローダウンも下振れリスク。中国は世界の中でいち早くコロナショックから回復に向かったが、足元、当局は景気過熱にブレーキをかけ、デフォルト(債務不履行)リスクを抑える方向にかじを切り始めているように見える。



◆野坂晃一・証券ジャパン調査情報部副部長

①2万8000~3万0500円

②4~6月期の好業績確認。

③米金融当局者によるタカ派的な発言。



◆仙石誠・東海東京調査センターシニアエクイティマーケットアナリスト

①2万7500~3万0500円

②経済正常化による日本企業の業績改善や衆院選解散による海外投資家の買い越し。

③世界的な金融緩和の解除を警戒し、景気減速懸念が台頭する。



◆小林真一郎・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員

①2万7500~3万0500円

②新規感染者数の抑制、ワクチン接種の進展など新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてくることに加え、無事に東京五輪が終了する、米国の株式市場の一段の上昇などの材料がそろえば3万円を超える可能性が高まる。

③ ②と反対の条件となるが、特に東京五輪をきっかけに感染が再拡大し、4度目の緊急事態宣言に追い込まれるとともに、菅政権の支持率が低下し、秋の総選挙で与党の議席がかなり減少するとの見方が強まるなど政局の不透明感が強まってくれば、調整局面が長引くリスクがある。



◆圷正嗣・SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト

①2万6500~3万0500円

②7月下旬から本格化する第1四半期決算での業績の回復傾向の確認とインフレ懸念の後退。加えて国内のワクチン接種が進展。

③インフレ懸念がくすぶり続け、原材料高が継続しその悪影響が企業業績などにも顕在化し始める。



◆北原奈緒美・内藤証券投資調査部シニア・アナリスト

①2万7300~3万0400円

②4~6月期の好業績を踏まえた業績予想の上方修正期待の高まり。

③4~6月期決算発表後も企業経営者が慎重な姿勢を崩さなければ、いったん売られる展開へ。



◆大塚竜太・東洋証券ストラテジスト

①2万8000~3万0000円

②4~6月期の決算を評価する動き。企業業績は昨年4~6月期に比べて改善が見込まれる。経済活動も今後活発化しよう。

③新型コロナウイルスの変異株が広がり、再び緊急事態に追い込まれるなど、コロナ問題の状況悪化は下振れリスク。都議会選で都民ファーストが議席を大きく減らし、小池知事が辞任に追い込まれ、東京五輪の運営でも混乱が生じるといった事態も株安につながりかねない。また、米国の利上げをめぐる不透明感が尾を引けば、株価の重しとなる。



◆井出真吾・ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト

①2万8000~3万0000円

②今年度は期初の企業による業績予想が慎重だったこともあり、4~6月期の決算発表では例年以上に通期予想の上方修正が多そうだ。上方修正がない企業も、通期予想に対する進ちょく率は高いだろう。ただし、3万円を超えると高値警戒感が出そうだ。

③米国のテーパリングを意識せざるを得なくなっている。ただし、市場にも「免疫」ができつつあり、先日のブラードショックのような急落は起きにくい。米中対立の激化もリスクシナリオとして考えられる。



◆村山大知・eワラント証券アナリスト

①2万8200~29800円

②ファーストリテイリング、ソフトバンクグループなど日経平均の高構成比銘柄の株価回復。

③ワクチンの有効性が疑問視され、米国株が下落すれば日本株も連鎖安へ。



◆菊池真・ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役

①2万4000~2万9500円

②米国でインフレ加速懸念が沈静化し、金利が安定推移する中で、米国株が緩やかな上昇トレンドを継続する。東京オリンピック・パラリンピックは、完全無観客、関係者と一般国民の完全隔離の下で行なわれ、無事終了する。

③米国でインフレ懸念が加速し、テーパリング早期開始観測が台頭し、金利が大幅に上昇する中で、米国株が大幅に調整。菅政権がワクチン接種に続き、オリンピックをめぐっても政策結果が良好なものにならず、支持率急落。政局不透明感が台頭する。(了)

 

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